2019.03.19
モラルが崩壊した日本の惨状~あの美しき日本を取り戻すのは~

かつての日本では、一獲千金のごとく大金を懐にした人々は「成り金」と蔑視された。また、株式市場で他社の株の買収を図り我が傘下に従わせる行為を、「強盗まがい」とこれも蔑視されてきた。

世界には億万長者はたくさん居るが、アメリカなどを例にとれば、多くの億万長者がさまざまな団体や個人に多額の寄付をしているという。そうした例に比べると、日本の富裕層からはあまり話を聞かない。

自分がいかに金持ちかということを吹聴し、テレビで自慢げに豪華な装飾品を見せびらかす人がいかに多いか。

今から22年前、証券大手の山一証券が破たんした。山一證券は1897年に創業され、野村證券、大和證券、日興証券と並んで日本の四大証券会社の一つだった。その山一証券は、不正会計が明らかになり破綻したのだが、今日に至ってもなお、この会社の破たんが人々の口に上るのは、一つに日本経済のバブルが崩壊し、その後は「失われた20年」といわれるようになった不祥事だったことであり、もう一つは、当時の野澤社長が涙ながらに、破たんは、「社員は悪くありません!!!悪いのは全部経営陣です!!!」と謝罪したシーンが人々に鮮烈な印象を与えたからである。

その後の日本経済では企業経営の不祥事は後を絶たない。東芝の粉飾決算をはじめとして、自動車大手の品質データの改ざん、鉄鋼大手も同様の過ちを犯す。また、【日立製作所とグループ会社計11社が昨年、国の監督機関「外国人技能実習機構」から数々の技能実習適正化法違反を指摘されていた。グループで30万人を雇い、経団連会長を出している日本有数のグローバル企業の足元で、実習生を不正に働かせていた。】(朝日新聞デジタル 3月5日)

神戸製鋼と三菱マテリアルの両社は、JIS認証取り消しの処分を受け、規格の信頼性に傷がついた。かつては世界一の品質と豪語してきた製造業への信頼は大きく損なわれ、国際的に高い評価を得てきた日本のものづくりへの信頼が揺らぎかねない事態に発展してしまった。

経済分野から政治に目を移してみよう。2019年に入った途端に話題になったのが統計偽装であった。統計が一国の現実を知らしめる有力な方策であることは論をまたない。

統計と言えば、かなり昔だが中国政府の発表には眉に唾付けて聴くというのが一般的だった。政府の統計には信頼性がないことを指摘した表現なのだが、実は人口統計すらも信頼されていなかった。その他の指標も推して知るべしで、政府にとって都合のいい方向へ国民を誘導するために統計数字を操っていたからといわれる。

統計を権力者が操作するのは、時の政策が何となくうまくいっていると思わせる手法として扱うからである。統計に対する信頼をなくすと、政府の発表する数字はすべて嘘と思われ、次の政策を立てる際の基盤さえ失ってしまう。国民から見るとわかりにくいのが統計だ。勤労統計に不正があるといっても、不正の結果が何を意味しているのかを理解するのが難しいのだ。
だから、国民にとってわかりにくい統計数字だから誤魔化せる。すでに前科がある。数年前の年金問題だ。もともと年金の仕組みは素人には分かりにくい。国民一人ひとりが自分の年金額を計算するにはかなりの知識と労力がいる。だからすべて専門家に任せているのである。専門家を信頼する前提で成り立っているのが年金なのだ。私たちが日常生活を大過なく過ごしているのは、それぞれの分野の専門家を信頼しているからであり、いま問題になっている「厚労省による統計の改ざんと不正」は、この信頼を根底から裏切り、何を信じて生活すればいいのかという疑問を投げつけてしまった。単に仕事のミスではない国民に対する重大な背信行為なのである。

そして、統計は使い方次第でどうにでもなるという事実を明らかにしてしまった。まさしく統計は政治であることを証明したのである。政府の都合の悪いことは発表しない、あるいは数字を加工して発表するという、独裁国家と同じことをするようになってしまったのである。

公文書の改ざんが大きく取り上げられたのが、昨年(2018年)の「森友学園」「加計学園」問題である。

森友学園問題で、国有地が不当に安く払い下げられた背景に何がったのか。安倍政権とも密接な関係を持ち、憲法改正などを声高に謳いあげ政治活動にまい進する右派組織に「日本会議」という団体がある。森友問題で有名になった籠池氏はこの会のメンバーであった(後に退会処分になるが)。同じ右派グループの同志で学園の名誉校長に就任した安倍首相夫人の知己を得て、その影響力を最大限に利用しようとするのも、政治の世界ではありきたりなことでもあるのだろう。最初は仲が良かった関係が、あることで躓くと犬猿の仲になるのもよく見かける現象だ。

そしてついには、払い下げに関係する公文書が改ざんされる事態へ発展してしまう。加えて良心の呵責に耐えかねた官僚に自殺者まで出してしまうのである。

こうした【財務省による組織的な公文書の改ざんと廃棄は、国会と国民を欺き、民主主義の根幹をズタズタにする大事件となる。】(朝日新聞デジタル 2018年12月30日)

あれだけ大きな問題であったにもかかわらず、政治家や官僚もだれ一人責任を取ろうとはしない。これは自民党を支持すとかしないとかということよりも、日本の民主主義をどうするのかという問いでもある。
【昭恵氏が口利きをして、夫人付き政府職員の谷査恵子氏が財務省に問い合わせを行ったことが赤裸々に書いてあったから、財務省は改竄したのです。その事実こそが国民にとっては重要で、昭恵氏が関わったから8億2千万円もの無理な値引きが行われたことが明らかになったわけです。それが罪に問われないなら、口利きする政治家の天国になってしまいます。】(神戸学院大学 上脇博之教授)

政治の世界も、名門企業を中心とした経済界も、完全にモラルが崩壊してしまった。それは社会全体のモラルを崩すことにもつながる。それが恐ろしいのだ。

信じられない出来事が次から次へと起こるようになった。アルバイトであれ派遣であれ、従業員による破廉恥行為がSNS(不適切動画)へ堂々と投稿されるサービス産業。

あらゆる分野で起きている「モラルの崩壊」。この殺伐とした社会の行き着く先には何が待っているのか。IT企業経営者を経て作家として活躍する一田和樹(いちだかずき)氏の次のような指摘をよく吟味してみたい。
【これまでの民主主義は明文化された制度などによって守られてきたのではなく、制度の背景となった価値感や行動によって守られてきたのが実態だ。言葉を換えると、明文化された民主主義の手順だけでは民主主義を支えられない。その背景にある価値感を尊ぶ雰囲気がなくなれば民主主義は死ぬ。民主主義を殺すのは民主主義のプロセスなのである。】
【たとえ対立する政党あるいは政治家であっても、相互に寛容で、権力を握ったとしても自制心を持って運用しなければ民主主義は死んで全体主義化する。】

6月には参議院選挙がおこなわれる。各労働組合は、死と化した日本の民主主義を再生させ、そして崩壊したモラルを立て直し、愛する美しき日本を取り戻さなければならない。

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