2019.04.01
2019春闘でどんな議論を戦わせましたか?

この時期はまだ、春闘未妥結の労組もあるかと思いますが、2019春闘の論点は何だったのか、振り返ってみたいと思います。
まず、労側の主張である、連合の第79回中央委員会確認(2018年11月30日)の2019春季生活闘争方針を私なりに要約すると、次のようなものです。
「社会・経済の構造的な問題の解決をはかる『けん引役』として実行力、すなわち、現存する課題と変化への対応力に磨きをかけていくため、賃金決定メカニズムとしての『春闘』の形を再構築していく。

具体的には、生産性三原則に基づく労使のさまざまな取り組みを未だ届いていない組織内外に広く波及させていく構造を補強するとともに、労働組合の有無にかかわらず、一人ひとりの働きの価値が重視され、その価値に見合った処遇が確保される社会の実現を目指していく」
一方、使側は、2019春闘を前にして、経団連の工藤泰三副会長(経営労働政策特別委員長)の発言を、朝日新聞は次のように伝えました。
「労働生産性が高まらないと賃金も上がらない。働きがいを重視して、生産性を労使で高めていきたい」「交渉の重点テーマは、企業によって異なる。労働生産性が高まった企業では賃上げになるだろうし、新商品を生み出せない企業は、研修や教育についての話し合いに力が入るだろう」
(朝日新聞2月1日)

私は、この労使の発言に見られる微妙なズレにこそ、今日の春闘を展開する際に、各労組が春闘交渉に当たり、悩ましい問題を抱えることになるのだろう、と捉えています。
つまり、春闘での労働組合の側からの攻めどころ(主張)の弱さが示されている、と思うのです。
一般に労働界には、「賃金の引き上げが労働者の働く意欲を高め、それが労働生産性を高めていく」という因果関係が成り立っている、という考え方があります。また、実際にそのように主張しています。春闘要求の労働組合側の基本中の基本の論理展開です。
このような論理展開をするのは、20世紀型春闘が「経済成長⇒賃金引き上げ⇒消費の拡大⇒経済成長」の循環として回っていたことから、主張されていたものです。
しかし、残念ながらこの20世紀型システムは崩壊しています。

2017年11月セミナー後に、私はある中堅規模の精密機械労組の書記長から個人的に質問を受けた内容が、今でも忘れられない記憶として脳裏に刻まれています。
それは、私がこれからの春闘の推進の論理として「働きがいの向上⇒労働生産性の向上⇒付加価値の向上⇒賃金・労働条件の向上」のグッド・サイクルを回すように主張したセミナーが終わってからの相談でした。
その書記長の質問内容の骨子は次のようなものでした。
「2017春闘で『賃金の引き上げ⇒働きがいの向上⇒労働生産性の向上⇒付加価値の向上』を主張して、ベア実施となりました。ところがその後、労働生産性が低下して、利益が減少してしまい、会社側から『来年の春闘では賃下げ要求したい』と言われてしまっている。どうしたものか」という相談でした。

グッド・サイクルを回す出発点は「働きがいの向上」であって、それは「賃金の引き上げ」だけでは回らないこと。仮に「賃金の引き上げ」で回り始めたとしても、長続きしないこと。「働きがいの向上」の原動力となるものは、賃金以外のもっと別の多くの要素であることを伝えました。
また、春闘で賃上げを実現するには「働きがいを高める」という取り組みを通年で展開していなければならないことも、書記長にお伝えました。
そして、「働きがいを高める」には、まず何よりも「働きがい」を高めたり、低めたりする要素が何なのか、各企業によって違いがありますし、また、その要素間の因果関係にも違いがありますので、それがどのようなものなのか労働組合としてしっかりと調査研究(量的調査+質的調査)する必要があります。その調査研究の結果から、何に取り組めばよいのか、会社がすること、労使ですること、労働組合がすることを決めなければなりません。
また、その取り組みの中で、「労働生産性」を何によって判定するのか、労使で決めなければなりません。そして、その判定基準は組合員も納得する形にしなければなりません。
工藤氏の発言には「働きがいを高めると生産性が高まる⇒賃金の引き上げが可能となる」という含意があります。この点にこそ、今日の労働組合側が春闘を一点突破全面展開していく、切り口が示されていると考えています。

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