2019.05.07
私事の近況報告「ただ今、渋谷を徘徊中」

65歳にして学を志し、入学させてもらった法政大学大学院連帯社会インスティテュート(別名:連合大学院)の労働組合プログラム・コースを、3月24日無事卒業しました。
おかげさまで、最終学歴を「中卒」から、一挙に「大学院修士課程修了」と、学歴ロンダリング、キセル、合法的詐称に成功しました。
振り返ると、大学院に合法的に入るのはけっこう大変でした。若かりし頃、ニセ学生になった時と比べると、苦労しました。
提出した論文で受験資格を認めていただいたことは感謝するのですが、経営学研究科の3コース(人材・組織マネジメント、マーケティング、企業家養成)の口述試験に連続して臨んだところ、3回とも落とされました。
ラストチャンスとなった4回目は、連帯社会インスティテュートの労働組合プログラム・コース(中村圭介教授)を、と最後の頼みの綱で受験し、受け入れていただきました。

書き上げた修士論文(題目:労組組織率の低下の要因と対策―A大学教職員組合の事例研究)の骨子は、次の通りです。
【組織率低下に関する先行研究では、内的環境に原因を求める「企業別組合の限界」説、「組織努力の不足」説、「組合魅力の低下」説の3つに分類される。
労働界では、この3説からの原因分析や対応策等の提言を受けて、組織化・拡大に取り組んできたものの、成功したとは決して言えない状況にある。
労組の「組織率の低下」がどうして今も続くのか、それは「組合員・労働者の組合離れ」に起因してのことなのか、さらに、どうしたら組織率低下に歯止めがかけられるのか。この問題に一番シビアに直面しているオープンショップ制の労組の現場から解を得ることに挑戦し、結論は次の3点となった。

1つ目は、組合活動を活性化し、魅力的な組合活動を組織内外にて展開することが、組織率向上には不可欠である(組合活動活性化⇒魅力度アップ⇒組織率の向上)、という1980年代のUI運動時代から労働界に立てられてきた議論を再考する必要がある。この仮説は、オープンショップの労組が組織拡大を図るにあたって、成り立っていない。
生成された新たな仮説は、組織率の高低は、入社時(新入社員研修時)やその後の職場配属時に、職場の組合役員から誘われているかどうかに関わる。また、その誘い方が重要で、組合に入るのがさも当然のように誘われ、自然に加入書が渡されて、その場およびその後に組合役員が訪れて確実に回収しているかどうかに関わっている、との同調行動仮説である。
従って、労組の組織率を高めるための理論的枠組みとしては、UI運動が依拠していたマーチ=サイモン(2014)の「組織均衡論」ではなく、コトラー=アンドリーセン(2005)が指摘する、非営利組織のマーケティング戦略としての「BCOSモデル」の適用が望まれる。
2つ目は、組織率の違いは、仕事の進め方や職場の在り方、職場での参加・交流・信頼(社会関係資本)と関連している。
3つ目は、オープンショップ労組の組織率の高低は、それが良いか悪いかの運動論的判断は別にして、労使関係(対立的か協調的か)に強く影響を受けている。
以上3点をまとめると、オープンショップ制の企業別組合において組織率の低下を防ぎ、その上昇をもたらすために最も重要なことは、新規に採用された従業員を加入させることである。もちろん脱退者を出さないということも重要である。前者の動きを加速させ、かつ後者への対策となる要因は何か。本調査研究が明らかにしたことは、①他者からの影響(同調行動)と自己有効性(個人的な確信)、②職場の社会関係資本、③協調的労使関係(経営資源としての労使コミュニケーション )である】
というものです。

今後は、さらに労働組合研究を進化させるべく、國學院大學大学院経済学研究科の博士後期課程に進学しました。本田一成教授に師事して、さらに調査研究を深めて行く予定です。本稿が公開される5月には、國學院大學大学院の「デイサービス」(自称)に元気に通い、渋谷界隈を徘徊していることと思います。

参考文献

・ジェームス・G・マーチ+ハーバード・Aサイモン(2014)『オーガニゼーションズ―現代組織論の原典』高橋伸夫訳、ダイヤモンド社
・フィリップ・コトラー+アラン・R・アンドリーセン(2005)『非営利組織のマーケティング戦略 第6版』井関利明監訳、第一法規
・呉学殊(2011)『労使コミュニケーション』労働政策研究・研修機構では、組織率の低下に伴う労働組合の存在意義が希薄化していると言われる中、1990年代以降の労使関係のありように着目し、労使が対等な関係にあることが企業の発展に大きな影響を及ぼすことを明らかにしている。労使関係を経営資源として捉え、労使の高い対応能力に注目している。

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