2019.09.20
プラスチックごみと私たちの生活意識

 2018年、鼻にプラスチックのストローが突き刺さり、それでもなお泳ぎ続けるカメの映像は私たちに強烈なショックを与えた。

 翌2019年3月、今度はフィリピンで【約40キロのプラスチックごみが胃にたまって餓死寸前に陥ったクジラが15日にフィリピンの海岸に打ち上げられ、翌日に死んでいたことが分かった。環境保護活動家らが18日明らかにした。活動家らは、過去に見てきた海洋プラスチック汚染の事例の中でも、今回は最悪の部類に入ると指摘した。】(「AFP=時事」3月19日)

 私たちの生活環境においては、その時代時代で問題になることが変化していく。江戸時代には排気ガスなどの環境問題はなかったが、道路のぬかるみ、上下水道の整備などの課題は多かった。それらは時の権力者の意識次第で整備されたり後回しにされたりしたようだ。

 日本での生活環境にまつわる話題でいえば、公害問題がその筆頭だろう。古くは足尾銅山の排水による問題、水俣病問題、工場や自動車の排気ガスによる人体への影響などさまざまである。近年は温暖化による異常気象が気になる。

 温暖化による異常気象に気を取られているうちに、今度はプラスチックごみへの対応が叫ばれる。私たちの生活はプラスチック製品を抜きには語れないほど、生活の隅々に浸透している。その代表は、買い物の必需品ともいうべきレジ袋であり、飲み物に欠かせないストローであろう。

 それらのプラスチックごみが環境汚染の元凶になっている。環境汚染をとるのか、生活の便利さを取るのか。そんな命題を私たちに突きつけている。

 世界の趨勢を見れば、プラスチックごみの削減は急ピッチで進んでいる。日本の立ち遅れが目につく。

【カナダのトルドー首相は10日、レジ袋やストローなどの使い捨てプラスチックを早ければ2021年にも禁止すると発表した。海洋汚染や気候変動対策として「脱プラスチック」の動きは世界的な潮流となっており、カナダの取り組みは他国にも波及しそうだ。

 トルドー首相はカナダ・ケベック州での記者会見で、「次の世代のためにも、プラスチック汚染を減らし、環境保護を進める責任がある」と述べ、同様の取り組みを進めるとしているEUの事例などを参考にしながら、使い捨てプラスチック製品の禁止を進めると表明した】(「読売新聞オンライン」6月11日)。

 遅ればせながら日本も、環境省がプラスチック製レジ袋の無償配布を禁止する法令を、速やかに制定すると発表した(6月4日)。

しかし、原田環境相は「レジ袋の無料配布をしない、廃止ということをこれから具体化、具体的な政策にしていきたい」と述べているように、早くて2020年中にレジ袋の有料化を実施したいとしつつ、小規模な店まで一律に規制をするのかは今後、検討するとしている。

そして、6月28日・29日に大阪市で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議では、「海洋プラスチックごみの海洋流出を2050年までゼロを目指すことで合意した。」ので、廃棄に遅れた日本の役割は、代替品の開発や、代替素材をいかに使いことなすかが鍵になるといわれている。

【たとえば日本製紙は、口にくわえたときに感じる「口あたり」にこだわった紙製ストローを発売した。プラスチック製のストローよりも口にくわえたときに温かみがあるうえ、2時間以上連続で使ってもふやけて使えなくなったりしない。国産の安全性も強調する。一方、ストローの老舗である、三井松島ホールディングス傘下のストロー最大手である日本ストロー(東京都品川区)は、紙製ストローを今秋にも商品化すると伝わった。やはりプラスチックに代わる素材として紙を使い、他の紙ストローよりコストを抑えて高いシェアを奪いたいという。】(「まいどなニュース」7月9日)というように動きは急である。

 また、包装材一般でもプラスチックから紙に置き換える動きが広がりつつある。段ボール最大手のレンゴーでは、発泡スチロールや気泡緩衝材などから、どんどん段ボールに置き換わっている。

 その一方で、代替品としての紙の最大の弱点は、水に弱いということから開発が進んでいるのが「生分解性プラスチック」といわれる。これは普通のプラスチックのように使えるが、使用後は自然界の微生物によって水と二酸化炭素に分解されて自然にかえるのというものだそうで、バイオプラスチックとも呼ばれるが、価格が高いのが難点という。

 すでに三菱ケミカルが開発したものに、生分解性プラスチックの資材を使ったストローがある。カネカやユニチカなども、すでにストロー用素材を実用化しており、小売店などで使用が始まっているという。

 日本の技術進歩には驚くばかりだが、こんな記事にも驚きを隠せない。

【堺市内で見つかった細菌が世界の注目を集めている。ペットボトルを「食べる」性質があり、プラスチックごみ対策の切り札にしようと各国で研究が進んでいる。

 この細菌は堺市内のペットボトルの処理工場で、京都工芸繊維大の小田耕平教授(現・名誉教授)らが見つけた。発見場所にちなんで、2005年に「イデオネラ・サカイエンシス」と学名がついた。

 その後、慶応大に在籍していた吉田昭介さん(現・奈良先端科学技術大学院大特任准教授)らの研究で、この細菌は特殊な2種類の酵素を出して、ペットボトルなどの素材として利用されているポリエチレンテレフタレート(PET)を分解し、栄養源としていることがわかった。厚さ0・2ミリのPETを、約1カ月で二酸化炭素と水にまで分解するという。】(「朝日新聞デジタル」6月20日)

 さて、このレジ袋の廃止について、「廃止も有料化にも反対」という声は多い。
その理由には

「レジ袋が廃止されるとコンビニで気軽にお昼も買えなくなる...

「レジ袋がないとゴミもまとめられなくなるし、有料化されると不便で困るんだけど...

「どうせ捨てるだけなのにゴミ袋(レジ袋)を買うのは、もったいない!」

確かに今までの生活が不便になるというデメリットもあるので、レジ袋の廃止・有料化には反対派の人もいるようだ。しかし、レジ袋などのビニール袋が原因で年間300頭ものイルカやウミガメが死に至るような被害を受けている。【毎年海に捨てられるプラスチックごみ400万~1200万トンのうち、海面にとどまっているのはわずか25万トンにすぎないと考えられている。全体的にみると、数十年間にわたり海に投棄されたプラスチックの99%以上が現在、行方不明になっている。】(「AFPBB News」4月10日)ことを知ると、「不便だから反対」という意見に与することはできない気がする。

 しかし、プラごみのリサイクルについてもなかなか難しい課題があるようだ。【日本では廃プラの86%が有効利用されており、プラごみ対策が進んでいるといわれる。だがこの数字には、サーマルリサイクルと称して焼却されているものがたくさん含まれる。そのとき生まれる熱エネルギーを発電や給湯などに「有効利用」している、という理屈だ。

 海外では通常、こうした一度きりの熱利用はリサイクルとみなされない。サーマルリサイクル分を除くと、日本のプラスチックリサイクル率は27%にとどまり、欧州連合(EU)の平均を下回る。この現実を直視する必要がある。

 忘れてならないのは、熱を有効利用しようがしまいが、廃プラを燃やせば必ず二酸化炭素が発生するということだ。地球温暖化防止のためのパリ協定により、温室効果ガスの大幅な削減が求められるいま、大量の廃プラを燃やし続ける行為が許されるはずがない。】(「朝日新聞デジタル」7月31日)

 プラスチックごみが地球環境を破壊しつつあることはわかっていても、自分たちの生活の便利さを見直すことは難しい。それでもプラスチック製品に頼らない生活スタイルに転換する努力をしなければならないのだ。

 まずは自分たちがやれることから実行していくしかない。一日遅れればますます環境の悪化は避けられないのだ。今からでも労働組合の社会的運動として取り組むべきものではないだろうか。

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