2020.01.21
技能実習生と日本人~外国人労働者と受け入れる日本の問題点~

 日本の人口減少のスピードは恐ろしいほどである。当然、15歳から60歳までの労働人口も同じように減少していく。国の経済にとって由々しき事態だ。

 現状の人手不足はますます深刻にならざるをえない。そこで何とか労働力の減少を補うために手を打たなければならない。まずは女性と高齢者の活用が頭に浮かぶ。

 しかし、就職先には正規雇用はあまりない。非正規雇用の受け皿になっているのが女性と中高年齢層に偏る理由にもなっている。さらに国内の雇用に多くを期待できないとなれば、外国人労働者に頼ろうと、技能実習生の拡充に目を向けた。政府がいくら否定しようが、日本は完全に移民政策に舵を切ったことになるのだ。

 この実習生の受入れをめぐっては様々な問題が顕在化している。

 まず第一の問題は、受け入れる際の在留資格「特定技能」制度が導入されたことだ。第二が外国人労働者に対する低賃金や長時間労働など過酷な実態である。
【まず、留学生です。1983年に大学の国際化をめざして『留学生10万人計画』が出されたのですが、当初はあまり増えませんでした。その後、18歳以下人口が減少し、定員割れに悩む大学が積極的に受け入れるようになり、次第に留学生が増加し、2008年には『留学生30万人計画』が策定されました。そして今、実際に30万人ほどの留学生がいます。『留学』の在留資格だと、原則、週28時間(以前は週20時間)のアルバイトが認められるので、彼ら彼女らは飲食店などのサービス産業の貴重な労働力になっています】(「日経ビジネスオンライン」10月15日)。

 その歴史をたどると、【80年代後半、バブル景気の労働力不足が問題になった頃、それを埋めたのは、就労できる在留資格を持たない「非正規滞在者」だった。
短期滞在(観光)などの資格で来て、そのままオーバーステイしていくケースです。当時は、入国管理も今ほど厳格ではなく、観光ビザで入ったまま働く人たちがいました。3K(きつい、きたない、危険)と呼ばれるような、日本人労働者が敬遠するような職場を、そういった外国人労働者が支えていたのです。1993年の時点ではおよそ30万人いました】(同)。

 国会では制度の詳細について「検討中」を繰り返した末に、採決を強行した技能実習生制度は、ついには、【労働力不足の供給源、しかも安価な供給源です。転職ができないわけだから、最長5年、安定的な労働力供給になります。技能実習生を雇用せざるを得ないようなところって、日本人を雇ってもすぐ辞めちゃうところが多い。そうすると、結局はまた募集しなければならなくなって、そういった募集コスト、採用コストも非常にかかってしまうんだけども、技能実習生なら安価で安定的です。基本的に20代で、若くて無理がきくので、長時間労働も大丈夫だろう、って雇用主にとってみれば、非常に使い勝手がよい制度になっていきました。一たびそれに依存してしまうと、賃金水準が抑えられるので、ますます日本人が働こうとしない職場になっていきます】(同)という状況に陥ってしまう。

 その結果、技能実習制度は「雇用主にとって非常に使い勝手がよい制度」として定着し、彼や彼女らは劣悪な労働環境に置かれていく。それらに拍車をかけたのが、技能実習生を斡旋する監理団体である。

【中小零細企業は、監理団体を通じて技能実習生を受け入れます。わかりやすく言うと、企業に代わって実習生の支援を行うのが監理団体で、企業は実習生1人あたりにだいたい月3万円くらいの管理費を払うんです。もしも100人いれば、それだけで毎月300万円で、実習生を受け入れれば受け入れるほど、監理団体の収入は増えます。農家さんに普及していったのも、監理団体が営業をかけて『この制度を使うといいですよ』っていうふうに誘ったことが大きい。で、一たび使うと、確かに便利なので、依存していってしまう仕組みが構造的に組み込まれています。グローバル化の中でコスト削減が、企業にとって非常に深刻な課題になっているのとリンクする形で、受け入れが拡大していきました】(同)。

【低賃金や長時間労働などのひどい状況は、団体監理型の技能実習で特に起こりがちだとされている。しかし、大企業による企業単独型でも、日立製作所や三菱自動車という超大手企業とその関連企業でも改善勧告や改善指導を受けるなど、やはり制度としての構造的な問題が浮き彫りになっている。2010年には、国連特別報告者が「奴隷的状態」と表現し、アメリカ国務省の「人身取引年次報告書」が、「人身取引に該当する」との見解を明らかにしていたほどだ。外国人労働者の受け入れをめぐって、心配された不祥事が多発している】(同)。

 日本の技能を外国人に修得してもらって母国で生かしてもらうという理念は、監理団体や受け入れた企業によって否定され、「奴隷的状態」とまで言われる状況が続いているのである。

 どうしてそうなってしまうのか。【実習生は「送り出し機関(本国)→監理団体(日本)→受け入れ企業(日本)」というルートで送り出される仕組みになっているが、実際には現地のブローカーから送り出し機関に送られる場合も少なくない。

 つまり、実習生はまずブローカーから送り出し機関に「売られ」、次に送り出し機関から監理団体に「売られ」、最後に監理団体から受入企業に「売られる」ということだ。

 技能実習制度そのものが「二重、三重の人身売買」といえるが、その過程で実際に「人身取引犯罪」が行われている可能性が指摘されているのだ】(「ハーバービジネスオンライン」9月24日・筆者注・この記事自体も保守言論誌『月刊日本』からの引用である)。

 それに輪をかけて日本の受け入れ企業が悪化に拍車をかける。
【厚労省は実習実施者に対する監督指導を行っている。同省によると、2018年に全国の労働基準監督機関が行った監督指導は7,334件、そのうち5,160件(70・4%)で労基法違反が認められ、19件が送検された。2017年は5,966件、そのうち4,226件(70・8%)が労基法違反、34件が送検。2016年は5,672件、そのうち4,004件(70・6%)が労基法違反、40件が送検。

 労基法違反のうち、主な違反は労働時間、安全基準、賃金・割増賃金の支払いなどだった。ある縫製業の事業場では、実習生6名に対して10か月間、月平均178時間の時間外労働を行わせる一方、賃金は半年以上全く支払わず、未払い賃金の総額は約1,000万円に上っていたという。この事例は送検されたが、その後の経緯は不明である。

 つまり、技能実習の現場では過去3年で1万3,390件の労基法違反があり、少なくとも数万人の実習生が労基法違反の状態で働かされていたということである。しかし、労基法違反の件数に対して送検の件数が少なすぎる】(同)。

 その上、管理団体や企業の取締に比較して、逃げ出した実習生への取り締まりは盛んだ。
【法務省は監理団体や企業は全くと言っていいほど取り締まっていないが、その一方で劣悪な労働環境から逃げ出した実習生はどんどん摘発している。2016~18年の過去3年間で、実習先から失踪した実習生は5,058人、7,089人、9,052人と年々増加しており、それと連動して元実習生の不法滞在者も6,518人、6,914人、9,366人と増え続けている。一方、過去3年間で退去強制措置がとられた元実習生は3,343人、3,146人、3,461人である。

 失踪者、不法滞在者が急増しているが、強制退去者は横ばいであり、法務省の対応が追いついていないということだ。だが、法務省がしっかりと監理団体や企業を取り締まっていれば、これほど失踪者らが増えることはなかったはずだ】(同)。

 民主国家において、強制労働をさせた日本企業を罰せずに、強制労働から逃げ出した実習生を逮捕・強制送還しているという現実が信じられない。
【技能実習制度は必ず将来に禍根を残す。現在、日本は戦時中に朝鮮人に強制労働をさせた「徴用工問題」に直面しているが、 ある支援者は「いま日本は国策として『親日』のアジア人を『反日』に変えて送り返しているのです」と嘆いていた。「反日」という俗語は使いたくないが、現状では将来的にアジアの国々が「反日」に一変するのは必至である。このままでは、21世紀の日本は「アジアの孤児」になるしかない】(同)。

 日本政府も時折は摘発もしているようだが、実際の現場ではこんなことまでしている。【外国人の技能実習制度をめぐり、受け入れを担う日本側の監理団体がベトナムの送り出し機関との間で、実習生が失踪したら賠償金を支払わせるなどの裏契約を交わしていたことが法務省関係者への取材でわかった。出入国在留管理庁と厚生労働省は、不適切な報酬の受け取りを禁じる技能実習適正化法に違反したとして、千葉、埼玉両県の二つの監理団体の運営許可を近く取り消す】(「朝日新聞デジタル」10月8日)。
さらに取り締まる側の法務省・入国管理局に至っては、【医療についての入管での処遇の悪さは極めて深刻だ。被収容者が体調悪化を訴えても「詐病(注・さびょう=経済的または社会的な利益の享受などを目的として病気であるかのように偽る詐偽行為)」とされ、入管側の医者が診療しても痛み止めの薬を処方するだけ、という事例が数限りない。入管側が適切な医療を受けさせなかったために、死亡したという例すらある】(同)。

 引用文が少し長くなったが、ここまでを整理すると、政府も民間団体も企業も一体となって技能実習生を反日に駆り立てている構図が浮かび上がってくる。こんな状態なのに「おもてなし」とか、「ニッポンって素晴らしい」と悦に入っていた自分が情けない限りだ。その一方で、技能実習生問題に独自に取り組んでいる組合が少数ながら見受けられるのはうれしい限りだ。この流れが日本全体の流れになるのを祈るばかりである。

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