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2020.08.03
コロナ恐慌に企業別組合はどう対処するのか

朝日新聞が、20年5月31日(日)に「個人加盟の労組 今こそ頼りに」と非正規労働者のためのユニオンが、「立場の弱い人たちの受け皿になっています」といった記事を掲載していました。
さらに、7月6日(月)には、「窮地の非正規 頼ったのはユニオン」と題して、時給4割削減の提案をうけた非正規労働者が、企業内労組に相談したが「加入できるのは正社員だけの労組だったため、非正規の働き手の悩みには十分に対応してもらえなかった」ので、連合中央ユニオンに加入し、団体交渉によって撤回に至った旨の記事が掲載されました。
私は、このキャンペーンを、正規労働者だけを組合員とする多くの労働組合(企業別組合)には、朝日新聞の労働組合も含めて、期待できないということを国民大衆に諭すもの、と受け止めました。
また、このことは、年越し派遣村が設置された2008年~2009年にかけてのリーマンショックによる雇用危機の時にも、企業別組合の存在価値が問われましたが、今回はそれ以上の、後の世にコロナ恐慌と呼ばれても不思議ではないくらいより重大な雇用危機に直面しており、まさしく日本の企業別組合及び協調的労使関係の真価が問われている、といってよいでしょう。

読者の組合役員や組合員の中には、労働組合が組織として、組合員の利益を最優先にするのは当然だが、組合員でもなく、組合費を払っているわけでもない人たちのことまで気に掛ける必要性はないのではないか、という意見を持つ方も多いのではないかと思います。
このような意見を正面切って述べないまでも、労働組合が組合員でない非正規労働者の利益を守ろうとするインセンティブに欠ける状態にあることは、だれもが承知していることでしょう。

しかし、昨今の企業においてコーポレート・ガバナンスのあり方が問われているように、労働組合にもユニオン・ガバナンスのあり方が今まさに問われています。
労働組合という組織は、企業に雇われて働く人の意見を収集し、経営陣・管理職に伝える法的責任を持っています。それは、労働基準法第36条にて示されている全従業員を代表している、という責任です。
この責任については、仁田道夫・日本労働組合総連合会編(2015)『これからの集団的労使関係を問う―現場と研究者の対話』エイデル研究所で、次のように紹介されています。

当時、連合総合労働局長であった新谷信幸氏は、「1章.労働者代表のあり方(労働者代表制、過半数代表制)―問題提起 組織率の危機と過半数代表者」の中で、過半数労働組合も、「過半数」であることに安住して自らの組合員だけの代表であっていいわけはなく、非正規労働者等を含む当該事業場の全労働者の過半数代表として、組合員以外の労働者の意向を適切に聴取・把握し、過半数代表としての行動に反映させていく姿勢が強く求められる(二五~二六頁)、と述べています。

続いて、濱口桂一郎氏は、「論文:労働者代表のあり方(労働者代表制、過半数代表制)―労働者代表法制のあり方」の中で、シングル・チャンネル方式の仕組みにおける過半数組合は、非組合員や他組合員も含めて全ての従業員の利益を代表するべき責務を負うことになり、自組合員だけの利益代表であることは許されない。現行法における過半数組合は既に純粋の自発的結社ではなく、一事業場の全ての労働者の利益を代表すべき責務を持った公的性質を有する機関なのである(三二頁)、と述べています。

さらに、水町勇一郎氏は、「論文:就業形態の多様化と集団的労使関係―労働組合はだれのためにあるのか?」において、アメリカ、ドイツ、フランスと日本の比較法的な考察から、日本の法的ルールや労使関係のあり方に対して、次のような示唆が導き出される、としています。
第一に、労働組合は単に組合員のために活動しているわけではなく、非組合員をめぐる問題も射程に入れて、労働者全体を代表する社会的な存在としての役割を担っていること(一三七頁)。
労働組合は、労働者全体を代表する社会的組織としてのプライド(威信)を得ながら、社会全体の連帯を築き上げていく基盤となることが求められている。この社会的役割に対する自覚とそれへの社会からの信頼がなければ、労働組合は組織率低下とともにその社会的使命を失っていくことになるだろう(一三八頁)。
第二に、非正規労働問題に対して就労形態を問わない連帯(法的には不利益変更取扱い禁止原則)を構築していくこと(一三八頁)。
第三に、非正規労働者を包摂した透明性の高い交渉・協議を行う(一三八頁)、ことをあげています。

まとめると、企業別組合が減少を続ける正規従業員のみを代表し続けるならば、労働者の代表としての労働組合の正当性はより脆弱化していく結果となるでしょう。
ですから、企業別組合が、法的にも、倫理的にも責任ある言動をとり、かつ、日本の協調的労使関係の本領(共同体意識)を発揮することで、この難局を労使で乗り越えたいものです。

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