j.union株式会社

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2021.02.01
個別的労使関係における分権的組合活動の重要性の発見(下)

「職場の人間関係」改善が、会社満足度・二重帰属度・組合満足度を高める

今月号も、A労働組合「職場委員アンケート調査」から、新たに発見した個別的労使関係における分権的な組合活動の重要性について述べたいと思います。
それは、個別労使関係の背後にある満足度に関して、因子分析を行って抽出した要素の「職場の人間関係」の改善が、組合に対する満足度、二重帰属タイプのPP型の割合、会社に対する満足度を高める、という事実(発見)についてです。
それでは、これからその発見のプロセスを述べて行くことにします。

同アンケートでは、会社満足度と組合満足度を100点満点で記述してもらい、二重帰属度タイプを下記のように分類しています。
分類方法は、会社満足度の平均点(72.52)以上と組合満足度の平均点(66.65)以上のデータをPP型、会社満足度の平均点(72.52)以上と組合満足度の平均点(66.65)以下をPC型、会社満足度の平均点(72.52)以下と組合満足度の平均点(66.65)以上をCP型、会社満足度の平均点(72.52)以下と組合満足度の平均点(66.65)以下をCC型にカテゴライズし、新たな変数として「二重帰属タイプ」を算出しています。
あわせて同アンケートでは、個別的労使関係に関する2つの調査項目を用意していました。1つは「上司との関係性や組織運営について」5件法(1:そう思う...5そうは思わない)で尋ねた次の8設問です。

A.あなたは、上司と気楽に話し合える
B.上司は、あなたの意見やアイディアを尊重している
C.あなたは、上司の人柄を信頼することができる
D.上司は、あなたの成果や行動を公正に評価している
E.上司は、あなたのプライベートを理解し、配慮や応援をしてくれる
F.あなたは、上司の仕事が円滑に運ぶように協力している
G.上司は、仕事とプライベートの両方を充実させ効果的に働くことを推奨してくれる
H.あなたは職場に満足していますか

もう1つの調査項目は、「職場での上司の組織運営について」の次の6設問です。

A.職場のメンバーは、職場運営に自由に意見が言えている
B.みんなが意見を出し合い協力している
C.メンバーの意見や提案を取り入れた職場運営になっている
D.上司は、職場のメンバーに公正な態度で接している
E.職場の雰囲気は良い
F.上司は、OJT(仕事をとおしての教育訓練)のために努力してくれている

以上の設問のデータの背後に潜む説明変数を見つけ出すべく因子分析を行った結果、2つの因子を見つけ出すことができました。その結果が、次の表です。

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回転後の成分行列a  成分1  成分2
Q27-C.あなたは、上司の人柄を信頼することができる                    0.816  0.354
Q27-E.上司は、あなたのプライベートを理解し、配慮や応援をしてくれる           0.810  0.291
Q27-G.上司は、仕事とプライベートの両方を充実させ効果的に働くことを推奨してくれる    0.791  0.310
Q27-B.上司は、あなたの意見やアイディアを尊重している                  0.787  0.369
Q27-A.あなたは、上司と気楽に話し合える                         0.769  0.322
Q27-D.上司は、あなたの成果や行動を公正に評価している                  0.755  0.373
Q27-F.あなたは、上司の仕事が円滑に運ぶように協力している                0.737  0.262
Q28 F.上司は、OJT(仕事をとおしての教育訓練)のために努力してくれている          0.666  0.496
Q28-D.上司は、職場のメンバーに公正な態度で接している                   0.654  0.525

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Q28-B.みんなが意見を出し合い協力している                        0.249  0.880
Q28-C.メンバーの意見や提案を取り入れた職場運営になっている               0.355  0.839
Q28-A.職場のメンバーは、職場運営に自由に意見が言えている                0.379  0.810
Q28-E.職場の雰囲気は良い                                0.370  0.782
Q27-H.あなたは職場に満足していますか                          0.495  0.581

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"因子抽出法:成分分析 回転法:Kaiserの正規化を伴うバリマックス法" a.3回の反復で回転が収束しました。

因子分析で示される上表の数字は、「因子負荷量」と呼ばれ、変数(観測変数)に与える影響の強さを表す値で、観測変数と因子得点との相関係数に相当するものです。したがって±0.4以上の強い相関を示す値を示した設問が同じ成分グループと見なされます。上表では数値行間の――の上下で因子を分け、上を「上司との人間関係」下を「職場の人間関係」と命名しました。

次に、2つの因子グルーブに別れた設問の統合(変数の合成)を行って、「上司との人間関係」と「職場の人間関係」という新たな変数を創り出しました。
このような変数の統合を行う場合、検証のために「信頼性分析」というものを行って、統合した変数の尺度(値)がどれだけ信頼できるか評価します。その検出値を「Cronbachのアルファ」と呼び、0.6以上あれば採用されるとするものです。「職場の人間関係」のCronbachのアルファは0.916、「上司との人間関係」のCronbachのアルファは0.948の値を示しており、合成に問題ないことを確認しています。
そして、「上司との人間関係」と「職場の人間関係」の満足度の平均値を算出しました。「上司との人間関係」の値の平均値は0.40682、「職場の人間関係」は0.38179でした。ここで覚えておいて欲しいことは、個別的労使関係においては「上司との人間関係」の方が、「職場の人間関係」よりも満足度が高いということです。

続いて、合成した「上司との人間関係」と「職場の人間関係」の2変数の平均点以上を「良い派」、平均点以下を「悪い派」にカテゴライズしました。そして、二重帰属タイプの変数とのクロス集計分析を行いました。その結果が次の表です。

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二重帰属度  PP型   PC型   CP型   CC型
上司との人間関係良い派  度数   455    148    112    133
%    53.70%   17.50%  13.20%   15.70%%
上司との人間関係悪い派  度数   214    89     211    302
%    26.20%   10.90%   25.90%  37.00%
職場の人間関係良い派   度数   532    171    123    125
%    55.90%   18.00%   12.90%  13.10%
職場の人間関係悪い派   度数   137    66     200    310
%    19.20%   9.30%   28.10%  43.50%

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「良い派」と「悪い派」のPP型とCC型の割合を見れば明確です。「職場の人間関係」「上司との人間関係」の「良い派」にPP型タイプが多く、「悪い派」にCC型タイプが集中しています。
ここから、個別的労使関係(「職場の人間関係」と「上司との人間関係」)の良し悪しが、二重帰属タイプ(PP型とCC型)と強い相関関係にあることがわかります。
もちろん、このクロス分岐においても、カイ二乗検定を行って、これらの%割合「Pearsonのカイ2乗」の「漸近有意確率(両側)」が0.000を示し、有意な値であることを確認しています。
さらに、「二重帰属度(200点満点)」と、合成変数の「上司との人間関係」と「職場の人間関係」の相関分析を行うと、「二重帰属度(200点満点)」と「上司との人間関係」の相関係数は、0.333**、二重帰属度(200点満点)」と「職場の人間関係」は0.448**です(**は、相関係数が1%水準で有意(両側)であることを示すものです)。

続いて、合成変数の「上司との人間関係」と「職場の人間関係」が原因で、「二重帰属度(200点満点)を結果とする因果関係が成り立っているのか重回帰分析を行いました。その結果が次の表です。

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モデル 非標準化係数B 標準誤差 標準化係数ベータ t 値 有意確率
(定数) 61.144 3.425 17.854 0.000
上司との人間関係 4.582 1.279 0.118 3.583 0.000
職場の人間関係 15.339 1.181 0.427 12.992 0.000

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a. 従属変数 二重満足度総合計

この重回帰分析の結果から、「標準化係数ベータ」の値が「上司との人間関係度」が0.118、「職場の人間関係」が0.427で、プラスの相関を示しており、因果関係にあること、さらに、「上司との人間関係」より「職場の人間関係」の方が強い影響力にあることがわかります。

ここまでの分析の流れから、何が言えるかということですが、「二重帰属度(200点満点)」と「職場の人間関係」の相関関係(0.448**)は、「上司との人間関係」の相関係数(0.333**)よりも高いにもかかわらず、かつ重回帰分析でも上司との人間関係」より「職場の人間関係」の方が強い影響力にあるにもかかわらず、先に覚えておいて欲しいと述べたように、「職場の人間関係」の満足度の平均値0.38179は、「上司との人間関係」の満足度の平均値は0.40682を下回っていることです。
これを言い換えると、「満足度の変数間の相関関係が強いにも関わらず満足度の平均値が低く示された変数(「職場の人間関係」)は優先度の高い改善項目となるということです。
蛇足気味の分析でしたが、この満足度の構造分析を会社満足度と組合満足度と単独でやってみても、会社満足度に対する「上司との人間関係」の相関係数は0.540**に対して、「職場の人間関係」は0.613**と高く、組合満足度に対する上司との人間関係」の相関係数は0.255**に対して、「職場の人間関係」は0.306**と高いにもかかわらず、「上司との人間関係」の満足との平均値は、4.0682に対して、「職場の人間関係」は3.8719と低いのです。ここからも「職場の人間関係」が優先度の高い改善変数であることがわかります。

以上の分析結果から、労働組合として優先順位の高い取り組みは、「職場の人間関係」を改善する、ということです。
この「職場の人間関係」の改善の取り組みは、個々人の領域でかつ労使関係にある「上司との人間関係」よりも、職場のみんなの問題であり労労関係の領域ですから、労働組合として何より主体的・能動的に取り組むべき課題です。
労働組合として担う「職場の人間関係」改善の取り組みは、二重帰属度・会社満足度・組合満足度を高める、とても重要な取り組みだと言えましょう。

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