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2021.04.01
労働戦線 転戦のススメ(中)― 集団的労使関係での集権的組合活動から個別的労使関係での分権的組合活動へ ―

近年の厳しい国際競争の中で、日本人の働き方の問題としてよく取り上げられるものが、日本人のエンゲージメントの低さです。

エンゲージメントとは、従業員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」をあらわすものと解釈されますが、より踏み込んだ考え方としては、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」のことだといわれています。(https://jinjibu.jp/keyword/detl/176/)

ギャラップが2017年に発表した調査結果では、日本は熱意あふれる社員の割合が6%で、調査対象139カ国中132位という結果となったとしています。(https://ideal-leaders.co.jp/20180418111855_2401)

この日本人のエンゲージメントの値の低い問題について、若林満・城戸康彰(1986)「わが国労働者の職務満足度と組織コミットメント」『労務研究』第39巻、第9号では、「すべての国際比較研究は、日本の労働者が、現場の従業員からトップ・マネジメントまで、すべて相対的にみてかなり低い職務満足感しか抱いていないこと...組織コミットメント(忠誠心)についても同様な傾向が存在していた」(p.19)のは、「日本の労働者は仕事に対して『より高い期待』を持っていて...期待と現実のギャップに苛まれ、不満を募らせている...日本の労働者の低い満足度は、欲求充足度そのものの低さではなく、高いストレスという負の効果により侵食された結果である。...その原因は...①...日本の職場にはストレスの引き金となる要因が諸外国以上に多いという点と、②日本の労働者はストレスを処理したり解消したりするストレス耐性が脆弱である、という2つの点から検討されなければならない」(p.21)としています。

同じように、太源有・高尾義明(1997)「日本における組織帰属意識研究の展開と今後の課題」『産業・組織心理学』第10巻、第2号では、「米国から導入された組織コミットメントという概念は、Porter et al(1974)が指摘するように態度的アプローチに立ち、非常に積極的・能動的な態度を示すものである。しかし谷本(1992)が指摘しているように、日本人の労働者の企業へのコミットメントは単純に積極的・能動的ものではないと思われる。...このようなことから、日本人の帰属意識を組織コミットメントの測定尺度で充分に測定できるのかという疑問が生じてくる」(p.160)としています。

最近では、太田肇(2020)「「日本企業における協働のあり方―チームと個人の関係性に注目して」『日本労働研究雑誌』No.720/Julyにおいて、世界青年意識調査(第5回)のなかで、18歳~24歳の青年は今の職場で勤務を「続けたい」という回答の割合が11カ国の中で最も低い一方、「続けることになろう」という回答の割合が最高であることや、松山一紀の2016年同じ選択肢を用いてのWEB調査の結果、「続けることになろう」が22歳~60歳で40.5%と高い割合を占めたことを取りあげ、「日本人の職場における帰属意識は積極的ではなく、受身で運命的な性格が強いことが読み取れる」(p.51)としています。

さらに、松山一紀(2018)『次世代型組織へのフォロワーシップ論―リーダーシップ主義からの脱却』ミネルヴァ書房では、現代の先進国においてフォロワーたる労働者は、もはやかつてのように、資本家にただ盲従するだけの存在ではない。社会的地位の格差もなくなり、貢献に必要な能力も十分につけてきた。フォロワーが自律的貢献の主体者となり得るだけでなく、リーダー偏重の組織運営が限界に達している、と指摘しています。

松山先生は、フォロワーの社会的地位の向上をもたらしている原因を、近年の企業を取り巻く環境は劇的に変化し、職場でのICTの発達が労働環境を大きく変え、かつダイバシティーの進展によって、職場が一層複雑になっていることを挙げます。

そこに、教育水準の向上が労働に対する価値観を変化させ、多くの労働者が仕事や組織に対して高度な欲求を抱くようになっていること。さらに、技術の発達も著しく、上司は部下の仕事を理解することが困難になりつつあるだけでなく、顧客のニーズが細分化し、より高度になるに従い、市場に近いところで迅速に対応することが求められるようになってきていること。サービス産業の進展もそれを後押ししている、と教授は述べています。解決策は現場にあるという発想が当たり前となり、現場での意志決定が必要とされるようになってきている、との見解を示しています。

そればかりか、労働組織内におけるフォロワーの社会的地位が向上するにつれて―それはフォロワーの能力や意欲の向上を伴い、フォロワーが活躍することができる環境が整い、フォロワーの存在が認められるようになってきたということは、それだけリーダーの地位の低下を意味するものとなる、とも分析しています。

1980年代から1990年代にかけて、企業の組織構造はフラットになり、権力と責任は幅広くフォロワーに委譲されるようになったこと。リーダーがフォロワーにより多くのイニシアチブとリスクテークを期待していることも挙げています。

以上4つの先行研究の指摘が、領域Aにおける自律・当事者型の組合活動(職場での自主管理活動)の可能性と、集団的労使関係での集権的組合活動の限界が指摘されている、と私は受け止めています。

また、日本人労働者のワーク・エンゲージメントの低さ対策として、労働組合の採るべき道は、集団的労使関係の再構築ではなく、それではますます組合員は依存的になってしまうだけですので、これからは労働者一人ひとりが職場や仕事に対して自律的・主体的になるように、自律・当事者型の組合活動の配置(被評価者セミナーを展開して各人が個別労使交渉・協議を主体的・積極的に進められるようにする)ことだと考えています。

そして、個別的労使関係(「上司との人間関係」と「職場の人間関係」)の満足度を高めることが、メルマガ1~2月号の事例(A労働組合)で、組合員の二重帰属満足度を高める(PP型タイプの組合員を育成する)ものとなり、それはまた、近年の労働組合の目的=労働者の会社生活の満足度を高めることが単組(企業別組合)の本分でもありますから、会社満足度を高められる組合活動に価値があると筆者は考えています。

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