j.union株式会社

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2022.01.01
令和版「労働組合の意義と機能」―2021.12.6開催j.unionフォーラム発言要旨 その1

平成版「労働組合の意義と機能」として、かつて私は次の3つを意義としてあげ、活動目的とすることを推奨する著書、西尾力(1996)『労働組合「超」活動法―BEST主義リーダーシップ』労働組合活性化研究所を上梓しました。

①自分たちの所属する会社を「良い会社」にする。
②労働者の集団からプロフェッショナルの集団をめざす。
③集団及び個別の労使関係に発生する問題を、マネジメント力で労使対等を実現し、問題解決する。

そして、上記3つを実現するために、労働組合として発揮すべき機能として次の4つを掲げました。
(1)人材育成機能
(2)コミュニケーション機能
(3)メンタルヘルス機能
(4)良質の労働力(プロフェッショナル)づくり機能


しかし、平成版「労働組合の意義と機能」には限界があったと反省しています。それは下記の3点です。
1)「組織率の低下」と「組合員と組合離れ」に歯止めをかけられなかった。
  非正規労働者の組織化の意義や価値を十分に提示できなかった。
2)衰退する春闘にかわるムーブメントを起こせなかった。成果主義に対抗する組合活動として、
  個別春闘のための「被考課者訓練」を提起したものの組合活動の大勢にできなかった。
3)平成版労働組合の意義と機能の実現を、主に集団的労使関係での集権的組合活動で担えるもの
  と考えていた。下記図の領域Dでの活動で、組合活動の活性化(業態転換)を目指していた。
  領域Aの活動(個別労使交渉・協議と職場での自主管理活動)が不足していた。


65歳から第2の人生として始めた大学院での5年間の研究活動の結論でもありますが、領域Aにおける個別的労使関係での分権的組合活動が欠落した理由は、労使関係論の古典とされてきた、ウエッブ夫妻の『労働組合運動の歴史』(初版1894年)や『産業民主制論』(初版1897年)以来、労働組合とは「賃金労働者が、その労働生活の条件を維持または改善するための恒常的な団体である」(シドニー・ウエッブ、ビアトリス・ウエッブ1979:4)とされてきたことがあげられます。
労使関係とは、経営側と労働者側の労働力の集合的取引であるとされ、経営側と労働組合との間で行われる集団的労使関係での団体交渉もしくは労使協議という領域でのみ捉えられるもの、とされてきたからです。


どうして集団的労使関係にこだわり続けることになったのかは、濱口・海老原(2020)や野川(2021)に示された、次のような見解が一般常識化されてきたからです。
「労働条件の維持向上のために必要なのは、経営者と交渉することです。その際、一人の個人が単独で経営と対峙しても、多勢に無勢で要望が通らないことがほとんどでしょう。そこで、労働者が多数団結して、経営側と交渉する、という戦術がとられます。この団結して交渉を行なうために、労働組合が必要となります」(濱口・海老原2020:15)。


「労働力」という商品は「売り惜しみができない」という不利な性質を持っているので、労働者は確かに使用者より弱い立場にある。労働契約というものは、使用者の指揮命令に従って働くものということが労働者側の契約上の義務になるので、どうしてもそこでは人的な上下関係ができやすい。労働契約は、売買などの他の一般的な契約と違って、労働者になる側が常に「生身の個人」でしかありえないという特質がある。よって法人、会社と個人が契約を結ぶとなれば、本質的に個人が弱くなるのは当然である―ということから、「労働契約は本質的に労働者の側に立つ側が不利になるという特質がある」(野川2021:60-61)


企業別組合は、「わが国の労働者が労働組合を結成するとき、もっとも自発的かつ自然な形で選んだ」もので、「必然性をもって生まれた」とする白井(1968:32-33)でさえ、「労働組合の機能の第一は、団体交渉による雇用・労働条件の決定ということである。個別に切り離された労働者は、資本家や使用者と対等の立場で労働条件の取引は行なえないのであるから、...個別交渉による労働者同士の競争を制限することによって、...取引上の多少とも対等の立場に近づこうとする。これが労働組合結成のそのものの目的である」(白井1968:105)としており、個別的労使関係での個別労使交渉の展開など、検討の対象から、はなから除外されていました。


参考文献
シドニー・ウエッブ、ビアトリス・ウエッブ(1979)荒畑寒村監訳、飯田鼎・高橋洸訳『労働組合運動の歴史(上巻)』日本労働協会
白井泰四郎(1968)『企業別組合 増訂版』中公新書
野川忍(2021)「労働組合と法―労働組合法」仁田道夫・中村圭介・野川忍編
濱口桂一郎・海老原嗣生(2020)『働き方改革の世界史』ちくま新書

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