j.union株式会社

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2022.06.01
令和版「労働組合の意義と機能」―2021.12.6開催j.unionフォーラム発言要旨 その6

本シリーズ最後は、5月で述べた昨今の差し迫った課題に対して、令和の時代の労働組合は、何をすることが望まれるか、簡単に述べて本稿を締めくくりたいと思います。


①から⑥の課題に対応するには、一言でいうと、労働組合モデルを現行の賃金・労働条件引上げモデルから、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル=人々の協調行動を活発にすることによって、組織の生産性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった仕組み)モデルに切り替えることです。


賃金・労働条件引上げモデルのままでは、①の課題である非正規労働者を組合員にしようとすると、非正規労働者の賃金・労働条件の引上げ(同一労働同一賃金)にするために正規労働者の賃下げや労働条件を低下させることにつながらないかとの不安が組織内に生まれ、組織化モチベーションが働かないでしょう。
そして、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)モデルにするためには、「良い会社」とはどのような組織体なのか、労使で経営理念の共有をはかることです。そのために、労働組合としてのしっかりとした意見を持つ必要があります。会社が作成して提示してくる経営理念やビジョンをただ受け止めているだけでは(労働組合としての意見を持たなければ)、これまでと何ら変わることはないでしょう。


労組としての意見を持つとき参考にすべきものがあります。それは、経済同友会企業民主化研究会編(1947)『企業民主化試案―修正資本主義の構想』同友社と日経連能力主義管理研究会(1969)『能力主義管理―その理論と実践』日経連出版部です。当時の経営者の経営哲学がとても参考になります。昨今の経営者の軽薄さ(アメリカかぶれ)とは雲泥の差があります。


②の課題であるテレワークの時代の業績管理(考課)は、ますます拡大するでしょうから、労組主催の被考課者訓練の実施と実施後の実施レベル確認アンケート調査とインタビュー調査を繰り返し、労働力の個別取引に規制力が働いているか、活動しながら調査し、調査しながら活動していくことが求められます。もちろん、目標管理・人事考課制度の各面談を通して、業績達成に必要な労働時間がどれだけものになるのか、そのことの交渉・協議もわすれないようにしてください。


③の課題である組合のキャリア自律支援は、どうしても個々人の自由と自己責任によるエンプロイアビリティー能力の開発になりがちで、資格修得的学習になってしまいがちです。しかし、日本の雇用システムは新卒一括採用方式なので、採用にあたって職務(ジョブ)遂行能力が求められていませんし、配属された職場で、毎年動態的に課業設定されながら、上司や先輩からOJTされて、キャリア形成がされるスタイルです。このようなメンバーシップ型雇用のキャリア形成なので、自己責任でキャリア開発する習慣が身についていません。そのため「学ぶ時間(余裕)がない」との発言が多々見られます。したがって、個別労使交渉・協議(目標管理・人事考課制度の各面談)力を育成して、会社の要求と自分のキャリア目標の折り合いをつけていく力がなにより必要です。


組合活動のメニュー化で注意すべきは、主とする組合活動は個別的労使関係の領域から外れないようにすることです。個別的労使関係で当人が主人公になる機会や場が用意されていないと、つまり労使関係から外れた活動となると、組合員が組合や役員にサービスを求めるよう(依存的)になってしまいます。
さらに、④と⑤の課題は「働き方改革」に関連するもので、労働組合が取り組むべき「働き方改革」は、多様な働き方と賃金を組み合わせ、現行の12制度(正社員と非正規社員)から、11制度(全員多様な正社員)にすることです。それが、パートタイム労働者にも人事査定や動態的課業設定をもとめるメンバーシップ型の雇用システムの日本に求められている「働き方改革」です。似て非なるジョブ型雇用の大合唱に惑わされて、13制度(無限定正社員と限定正社員と非正規社員)の流れに乗っかって、雇用の多様化と流動化に(無為に)棹(さお)さしてはいけません。


ただし、個々人だけでの取り組みでは限界もありますし、個別労使交渉・協議に得手不得手もありますから、②と③の課題も含めて、職場労使懇談会等による職場での自主管理活動によって個別労使交渉・協議を補い、職場でのチームワーク力と労働時間管理力を高めることが求められます。そして、職場内での職務互換力の形成とワークアウト・ミーティングの実施や、職場横断的な自律小集団活動(ERGEmployee Resource Group=組織の中で共通の特性や人生経験に基づいて職場で一緒に働く少数派従業員の集団的発言)を促進していくことが求められます。


以上の組合活動をリードするために、⑥の組合役員のなり手の確保もかねて、組合役員(グルーブ労組の役員を含む)のリーダーシップ開発プログラム(職場討議・集会の進め方、労使交渉・協議の進め方、職場での組合活動の進め方等のカリキュラム)は必須で、将来には民主的リーダーシップを発揮する管理職へと育成させるという長期戦略をも持って、取り組んでいくことです。

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