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2022.09.01
「発言する職場」「模範的フォロワーシップ」「PDCAの運営」の共通点 下

今月号も、職場での目標管理・人事考課制度の各面談での従業員の面談力、つまり個別労使交渉・協議力(発言力)が企業間競争力の源泉になっていることを3つの先行研究から明らかにしていきます。あわせて、今日の労働組合の役割と責任が、個別的労使関係での分権的組合活動、つまり個別労使交渉・協議力(発言力)の実態及びレベル調査を行って、労働組合主導でそれの改善に取り組むことが、組合員・労働者の雇用と賃金を維持・向上させるには最も合理的かつ効果的であることについて論述していきます。


筆者がロバート・ケリー(1993)のフォロワーシップ論に注目する点は、先月号で紹介した小池和男(2012)における国際競争力の源を「発言する職場」と同じ視点に立ったものだからです。そしてさらに、実際のところリーダーシップとフォロワーシップはコンセプトも役割も別々のものである。が、両者は組織の貢献に向かって、競い合うのではなく、補足し合う存在なのだ(p.37)として、フォロワーとリーダーは弁証法的関係にある(p.42)、との認識に立っているからです。


そして、「大事なのは、どんな形であれ、この社会はフォロワーを認めざるをえない、ということだ」(p.44)と述べて、「私たちに残された道は、歴史と社会の流れが、強い模範的なフォロワーを生み出すことを求めている。まずは "従う" ことが持つ本来の価値と威厳を認め、評価しないことには何も始まらない。私たちに必要なのは、自発的かつ自分の役割を十分にこなす人材なのだ」(p.45)としていることが、労働組合の組合員・労働者教育及び組合活動の視点に必要不可欠なものであると考えているからです。


さらに、筆者が、ロバート・ケリー(1993)のフォロワーシップ論に注目するのは、模範的フォロワーを育成するには、長期勤務型の職場構造をデザインする(p.47)必要があることを指摘し、かつ、模範的フォロワーをフルに活用するために、組織は、組織目的、フォロワーの目的、そしていかにこの2つがぴったりとかみ合っているかを明らかにしなければならない。仕事を割りあてるときにリーダーは、いかにそれが目的と結びついているかを示さなければならない(p.71)としているからです。


そして、模範的フォロワーは、次の3つの学習可能かつ実行可能なスキルと価値観を持っている(pp.135-136)、としているからです。

仕事におけるスキル―模範的フォロワーとしての付加価値の生み出し方

  • 的を絞る。打ちこむ
  • クリティカル・パス(複雑な作業計画を図式化した作業関連図に各作業の所要時間、費用、コストなどを組み込み、事前に検討する)行動において有能
  • 組織における自分の価値を積極的に高めている

組織におけるスキル―模範的フォロワーとしての組織における人間関係の育み方、活用法

  • チーム・メンバーになる
  • 組織的ネットワークを作る
  • リーダーとともに歩む

価値構成要素―仕事と組織における人間関係を円滑に運ぶ勇気ある良心を身につける


つまり、模範的フォロワーの多くは、その組織で何を達成したいのかという明確な意識を持っているのに対して、その他の型のフォロワーのほとんどが明確な目標を持っていない。リーダーの一方的な目標設定に甘んじ、いわれるままに動く、というのが一般的な姿で、そうしていくうちにキャリアを積もうとする(p.139)との指摘が、ケリーのフォロワーシップ論のポイントです。


つまり、模範的フォロワーは、どうすれば自分の仕事がより大きな事業に結びつくかをはっきりと意識して動いている(p.142)。そのためには、部署内でもっとも有能と思える同僚や上司に、部署の目標は何か、何が一番重要か。その部署の仕事は組織全体にとってどういった位置をしめているのか、それぞれの部署の業務はどのようにかかわっているのか、を聞いてみることだ(p.144)、としていることです。


このようなロバート・ケリーの個別的労使関係の確立の方法には、今日の企業組織では、目標管理・人事考課制度の各面談(PDCAサイクル)での話し合いにかかわっています。目標管理・人事考課制度の各面談を通して、模範的フォロワーは、目標達成のためのクリティカル・パス(システム工学用語。重点管理の対象となる作業上の経路)に自分をおいて見つめている。目標にとって"肝心"なのは何か、どのようにして、だれがそれを定めているのか、を見いだし、目標達成までの仕事の全工程を把握する(pp.147-148)必要があります


そればかりか、模範的フォロワーは進行状況を毎日もしくは週単位で検討する。その環境での成功のポイントを迅速かつ正確に見分ける(p.152)、とも指摘しています。模範的フォロワーは自分が生んだ価値を整理し書類として残しておく。リーダーや会社の目標にいかに貢献したかの証拠になる(p.153)としています。模範的フォロワーは付随的責務にとりかかる前に、必ず最重要の責務をきちんとはたして付加価値を高めることを心がける(p.154)必要性も述べています。


ロバート・ケリーのフォロワーシップ論を言い換えると、フォロワーシップ論こそが21世紀型の労働組合活動の指針であり、その組合活動の核心は、個別的労使関係での分権的組合活動である、といえるでしょう。


そして、ロバート・ケリー(1993)のフォロワーシップ論が示唆するところは、労働組合が担うべき役割と責任が、"被考課者訓練"であり、目標管理・人事考課制度の各面談(PDCAサイクル)の実態及びレベルを調べて、その改善を図ることだと推論されます。
個別労使交渉・協議力(発言力)が企業間競争力の源泉になっていることの第3の根拠は、石田・上田編(2022)が、戦後日本の経営の神髄は「PDCAの運営」を中核とする仕事のガバナンスに他ならない(p.596)、という指摘からです。
そして、ここでいう仕事のガバナンスとは、「どんな仕事を、どれだけの分量を、どの達成基準で、何時間かけて遂行するか」という労働支出(p.48)の統制のことです。
しかも、日本モデルの労働のアーキテクチャは、経営層と労働者層のキャリアが分離しておらず統合しており、設定される課業も、欧米のように階層別に分離しておらず(事前に設定された静態的課業)、全階層で個々人の行う仕事の内容が仕事のガバナンス(=PDCA)から演繹された動態的課業となっている(p.578)ことを指摘しています。
そればかりか、「『PDCAの運営』を日本の経営方式としての中核的遺産として認識することは、状況変化への対応策にとっての拠るべき指針をもつことに等しい」(p.597)との指摘は、労働組合に対しても労使関係の構築の仕方を示唆する言葉となっている、と解釈できるでしょう。


以上、小池(2012)の「発言する職場」、ケリー(1993)の「模範的フォロワーシップ」、石田・上田編(2022)の「PDCAの運営」から、職場での目標管理・人事考課制度の各面談での従業員の面談力、つまり個別労使交渉・協議力(発言力)が企業間競争力の源泉になっていることは明らかであり、かつ今日の労働組合の役割と責任が、個別的労使関係での分権的組合活動、つまり個別労使交渉・協議力(発言力)の実態及びレベル調査を行って、労働組合主導でそれの改善に取り組むことが、組合員・労働者の雇用と賃金を維持・向上させるには、最も合理的かつ効果的であることは明白であることがご理解いただけたものと思います。


参考文献
石田光男・上田眞志編(2022)『パナソニックのグローバル経営―仕事と報酬のガバナンス』ミネルヴァ書房

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