2019.04.07
調査結果から見える『働き方改革』の現状

弊社調査パッケージ MSLについて
働き方改革関連法が今年(2019年)4月に施行されました。それを受けて、今回はここ1~2年で弊社が行った調査結果から、『働き方改革』に関連している調査結果について述べたいと思います。
弊社の調査商品で、組合員の会社に対する意識を問うMSL(Motivation Survey of Labor)という商品があります。このMSLの設問の中に、「残業を含めて、いまの労働時間は適当だと思う」(以降、労働時間の適切さ)と「休日や休暇は満足にとることができる」(以降、休日・休暇の取得)という設問があります。なお、すべての設問において、選択肢は[そう思う][ややそう思う][どちらともいえない][あまりそう思わない][そう思わない]の5段階となっています。以降、より肯定的な結果になったことを良好になった、より否定的な結果になったことを悪化したという表現を用いることとします。また、弊誌を読まれている方々には今更なことかもしれませんが、生産性を「業務におけるインプットとアウトプットの比率」と定義します。つまり、少ないインプットでより多いアウトプットが得られれば生産性が高く、インプットが多いにもかかわらずアウトプットが少ないと生産性は低いということになります。

調査結果からは生産性向上に至っていないことが判明
ここ1~2年では、「労働時間の適切さ」が以前と比べて良好になっていることをよく目にします。一方で、「休日・休暇の取得」では悪化しているか、変化のない傾向が目立っています。リクルートマネジメントソリューションズ社が行った「『働き方改革』の推進に関する実態調査 2017」では、『働き方改革』の一環としての施策として、最も行われているものが労働時間対策でした。読者の皆さまには、ノー残業デーの実施、退社時間の厳格化、フレックスタイム制などの弾力的な勤務制度の施行などがすぐに思いつくことでしょう。例に挙げたような対策によって、早く帰られる雰囲気が高まり(強制的に帰らされるということもあるようですが)、実際の労働時間が縮減されたという事例をよく目にします。その一方で、労働時間が縮減になった分、就業時間内にやらなければならない労働密度は高くなります。その結果、休暇を取りにくくなり、「休日・休暇の取得」は良好になっていないことになるわけです。
さて、MSLには「仕事以外に熱中できることがある」という設問があります。当該設問も目立った変化は見受けられません。当該設問は内容からして、ワーク・ライフ・バランス系の設問と言えます。また、MSLには生産性を問うような設問はありません。ただし、個々の能力がアップしているかどうかを問う「あなたの能力や技術は伸びている」という設問があります。この設問においても、労働時間との関連は見いだされていません。つまり、労働時間の縮減は進んでも、休みの取りやすさには変化はなく、プライベートの充実にもつながらず、能力・技術の伸長に至っていないことが類推されるわけです。さらに言えば、(弊社が行った調査結果からは)生産性向上には至っていないということが考えられます。

『働き方改革』の社会的理解の必要性
ここまで挙げた調査結果の対象労組さまでは、はっきりとした『働き方改革』を銘打っているわけではないので、『働き方改革』の成果が出ていないということを申し上げたいわけではありません。単なる労働時間縮減だけでは意味がない(生産性向上につながらない)と申し上げたいわけです。
既述したリクルートマネジメントソリューションズ社の調査結果で、『働き方改革』を阻害する要因として目立っていたものが、商習慣変更に対する顧客の同意が得られにくいことでした。この調査結果は、弊社で2018年に行った調査でも同様の結果が出ていました。つまり、自組織の社員に対する対応だけでなく、顧客の理解を進めないと『働き方改革』は進みにくいということが言えるわけです。社会的な理解が進まないと、法制化したはいいが、絵に描いた餅に終わる可能性があります。労働組合としても、罰則規定があるので仕方がないから対応するのではなく、誰のための何のための『働き方改革』なのかをよく考えた上で対応する必要があります。

依藤 聡j.union株式会社 調査グループ 課長

好きな言葉は「繰上返済」です。

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