2019.07.07
【対面活動】モダンユニオンの起点となるエスノグラフィック・リサーチ

2020年を跨ぐ組合活動がスタートするこの時期、何を軸に活動を進め、来るべき未来を描くのか?

過去の延長線上に未来を描きにくい今、クラシックユニオン再興論は非現実的だが、クラシックユニオンが生み出していた「状態」を再現する可能性は追求すべきだ。
その「状態」を一言で表現すると「Face to Face」である。当事者意識を持った職場委員が組合員と向き合い、組合員が自分事として労働組合に向き合う。ボトム・ミドル・トップそれぞれの労使が誠実に向き合っている。そのような「状態」を目指すこれからの組合活動について考える。

労働組合においては語り尽くされた「Face to Face」だが、社会的にも重要なキーワードである。SNSやクラウドも目的は「繋がり」であり、質感の高い「Face to Face」を促す仕組みだからだ。問題は組合活動における「Face to Face」のあり方や進め方にどれだけ創意工夫があるかだ。
「Face to Face」を実現する上で「エスノグラフィ」をコンセプトに位置づける。

「エスノグラフィ」とは、文化人類学、社会学などで実践されてきた、フィールドワークに基づく調査・記録手法であり、記録した文書を起源とする。近年は、消費者を深く理解するために活用されることが増えてきているという。

どうしたら顧客を理解できるのか。どうしたら潜在ニーズを掴み、価値を提供するにはどのようにすればいいのか。商品企画・開発、マーケティング、営業、経営者に至るまで、さまざまな立場の人々が常にこの課題に直面し、悩んでいるといっても過言ではないだろう。労働組合の経営においても同じである。

この考え方を応用して、組合員の職場生活を理解するための行動観察に活用することがお薦めだ。(=エスノグラフィック・リサーチ)
エスノグラフィック・リサーチの価値として一般的に指摘されている点は、
・ありのままの現場を理解できること。
・現場にある「仮説」を発見できること。
・仮説の背景にある文脈を理解できること。

従来の組合活動の定番であるアンケート調査との相違点は、仮説を前提とした設問設計ではなく、仮説を発見できる点と、その背景にある文脈を理解できる点にある。
エスノグラフィック・リサーチを活用する上で最も重視すべきことが「マインドセット」である。従来からある組合員と労働組合との関係の枠組みを取り払い、ありのままを理解すること。重要な点は、「見る」ではなく「観る」、「聞く」ではなく「聴く」スタンスでいることというわけだ。

エスノグラフィック・リサーチはクラシックユニオンが持ち味にしていた「Face to Face」そのものを体系化した調査手法であり、職場委員が組合員と向き合い「Face to Face」を再興する強力な武器になる。

実施のポイントとして、「どういうことを聞きたいのか」というテーマは大切にしながらも、「こうであろう」という仮説は持たないこと。そのためにも組合員に対するバイアスを排除しておくこと。主観や評価を入れず、まずは事実・実態をしっかりと捉えることが大切だというエスノグラフィック・リサーチを用いて、現場の生の声・姿・思いを起点にした組合活動を再興することで、職場・支部・本部の労使が創造的な労使関係になる状態はすなわちクラシックユニオンの再興であり、モダンユニオンの起点になる。
血が出ているからといってすぐ止血をして包帯を巻くのではなく、その根本的な原因と治療法を見出すことを目的としたエスノグラフィック・リサーチにトライすることが、未来の組合活動を切り開く突破口になる。

事実から気付き、本質的な課題や組合員のニーズを把握し、労働組合が提供できる価値は何か? どのようなビジョンを描き活動を前進させるのか? 組合員が本来望んでいる体験や行動とは何なのか? これらをコンテンツ化していくことが求められている。

「組合員は労働組合に関心がない」この既成概念や価値観をアップデートし、バイアスのかかっている眼鏡のフレームを替えてみる。節目のこの時期、視座の転換こそがリーダーに求められる資質である。

淺野 淳j.union株式会社 専務取締役

労働組合の集団的フォロワーシップ発揮を
応援し続けて20年!!

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