2019.10.06
【ダイバーシティー】見えない偏見

先日仕事の現場で、ジェンダーにまつわる偏見からくる扱いを受けたところ、同席していた他の男性社員はそれにまったく気づいていないという経験をしました。私自身は慣れているので特筆することはないのですが、見えない人には本当に見えないのだと実感したので、このテーマで話をしたいと思います。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)という言葉があり、ダイバーシティー(女性活躍)実現の壁だと言われています。例えば、「女性は子供を育てる役割があるので、責任のある仕事は任せないほうが良い」というような発言が、該当します。発言している本人は「女性に対する配慮」のつもりでも、このような発言をはばからない文化が背景にある組織の女性社員は、仕事を積み重ねることによる成長が、男性ほど見込めません。このような小さな配慮(遠慮?)が積み重なると、男性社員と女性社員との間に数年かけて大きなキャリアギャップが生じるのです。

これは大変わかりやすい例ですが、世の中には、他にもたくさんのアンコンシャス・バイアスが存在します。例えば、育児休暇を取得する男性社員を不当に扱う/ 女性を単独で海外出張させるのは危険/高齢者はITに疎い/最近の若者は根性がない/残業をたくさんする人は仕事熱心である/定時で帰る人は仕事が暇/運転は男性がうまい、などの発言や行動です。

労働組合の男性役員から「ダイバーシティー(女性活躍)の重要性は理解していても、プライオリティが低いため、なかなか組織内で前進しない」という相談を受けます。またとある組合から「ダイバーシティーのセミナーを男性講師にして欲しいので、どなたか紹介してもらえないか」と相談されたこともあります。確かにこのテーマの講師は女性が多いです。それは私も含めて自身の体験がベースにあるからでしょう。私自身は、最初に入社した会社で差別とまではいかなくとも働く女性に対する扱いに微妙な違和感がありました。その違和感にアンコンシャス・バイアスと名前がつくとわかったのは、それから20年以上も経ってからのことです。

組織における決定権を持っているのは、圧倒的に男性が多いです。だからこそ問題が見えずに、プライオリティはどんどん下がり、その違和感に名前がつくのに長い年月がかかったのです。ですが、世間的に認知度が低かったとしても、偏見を持たれている人間は実際に「存在して」「感じている」のです。アンコンシャス・バイアスという言葉が出てきたのは最近ですが、それを指すものは以前から存在していました。あまりにも認知度が低すぎたのです。今は、働く女性も増え、政府も女性活躍を推進し、以前より認知は広まったものの、見えない人には見えないという新しい課題が出てきました。

これは、これからのリーダー(日本は諸外国に比して圧倒的に男性が多いのが現状です)は、自分が認知できないものを取り扱わなければならないということを意味しています。実際に、セミナーで「職場の中のアンコンシャス・バイアスを探す」という議論をしてもらうとき、女性だけ、あるいは女性がいるグループは、次から次へと事例が出てくるのに対し、男性だけのグループでは事例がほとんど出てこないということがあります。そのような結果をあらかじめ想像していた私ですら、ここまで認知の差があるものなのかと驚きました。それだけ正社員の男性は組織におけるメジャーな存在であり、マイノリティがゆえの悩みや孤独感が実感しにくいということです。

従って「プライオリティが低い」とおっしゃるリーダーは、今一度、ご自分のダイバーシティーアンテナを広げて組織をみてください。組織には多様性が既にあり、実際に違和感を持ったり、蚊帳の外に置かれたりしている存在に気づくはずです。そして、この問題を取り扱うためには、自分を知ることが重要です。自分を知るということは、まずは自分の中にあるアンコンシャス・バイアスへの理解があるでしょう。しかし、「無意識の偏見」という名がついてるように、1人でいくら考えても見えてきません。これをきっかけに社内のいろんな違いを持った方と議論してもいいでしょう。組合活動のきっかけがあるかもしれません。

それでも「自分には偏見がない」と言えるとしたら、それこそが最大の偏見かもしれません。自分ではそのつもりはなくとも、偏見は見えない武器となり、受け手のモチベーションを低下させます。さらに、そのうえで多様性の一部を構成している自分に気づいてください。「問題を抱えている人と、それを解決する自分」といった問題を外から見るのではなく、それを放置することで問題を作り出している、問題に加担している自分に気づくことです。そこに気がついたときに、初めて多様性を活かすという視点に立てるのだと思います。

中岡 祐子j.union株式会社 管理本部

あ~、ハワイに行きたい!

« 前回の記事 次回の記事 »