2019.10.16
【人材育成】前向きに生きるために「相対的剥奪」と向き合う

先日の台風19号は、各地に大きな傷跡を残していきました。皆さんのお住いの地域はご無事でしたでしょうか?
今もなお、台風19号による被害は拡大しつつあります。皆さんの安全と、一日も早い被災地の復興を心よりお祈り申し上げます。

今回の台風上陸に際して、1か月前に猛威を振るった台風15号のことを、皆さんも意識せざるをえなかったと思います。台風通過後の千葉県南部で起きた長期停電の状況を教訓に、停電に備えた備蓄品の買い出しで、関東のスーパーなどは大賑わいでした。

つい2週間ほど前、大学時代にお世話になったAさんに会いに、台風15号で大きな被害を受けた千葉県南部を訪れました。台風の前から大学時代の友人とAさんの家に遊びに行こうという予定があったのですが、あの台風の状況を見て、そんなところに遊びに行っていいのかという気持ちもありました。ただそんな状況だからこそ、普段と同じように観光で訪れることで何かの力になれるだろうし、停電は1週間ほどで復旧しているとのことなので、Aさんを元気づけるためにも、予定通りに皆でAさんのお宅を訪問しました。

このAさんは以前からとても豪快な方で、以前にアルバイトでご一緒した際にかなり体力的に無茶な仕事をさせられました。しかしAさん曰く「普通の人は金を払ってジムに通って身体を鍛えるのに、お前らはバイトで金をもらいながら身体を鍛えられて贅沢だなあ・・・。」などと、今ならパワハラと言えるような仕打ちをしながらも、なぜか人間的な魅力がある尊敬のできる方でした。

そんなAさんですが、その後に会社経営に失敗し、両親の介護で長い間大変な苦労をし、離婚も経験しながら、最近は国の難病指定を受け、治療の副作用に苦しまれながら、闘病生活をされていました。今でも投薬を続けており大変な人生を歩まれている方です。
こうして聞くと、とても幸せな人生を送っている方とは思えないのですが、なぜか本人は明るく、まるで自慢話のようにこれらのエピソードを楽しそうに語るのです。

親の介護で仕事ができなかったからデイトレーダーをやってみたら、俺はセンスがあったから成功したとか、親の借金を抱えていたが、難病指定のため裁判所に行けないからと、借金取りがあきらめた話しとか、本当は月に何十万もかかる医療費が難病指定だから数千円で済むからお得だとか・・・。
本人と話していると当時からとても元気だったキャラクターそのままなので、私たちには大変だなあとは思いつつも、同情の気持ちが沸かないというか、どこかその自由奔放に見える生き方を羨ましいとさえ思い、これは果たして自分たちとAさんと、どちらが幸せな人生なのだろうかと考えさせられてしまう不思議な感覚でした。

社会学に「相対的剥奪」という概念があります。
人が何かに不満を感じるのは「絶対的な劣悪さ」に自分が置かれた時、では必ずしもありません。どんなに不幸な出来事があろうが病気であろうが、満足している人はいます。では何がネガティブな感情を引き起こすのか。
人が不満を持つのは、主観的に期待している状態と現実との間にギャップがある状態に直面した時です。
「相対的に何かを奪われているという感覚」こそが人びとの不満を生み出すというのが「相対的剥奪」です。

現代において、私たちは「相対的剥奪」をかつてより感じやすくなっています。
例えば30年前と比べて、今はより高性能の車をより安く買えますが、自分の車にかつての人以上に満足できているかというと、必ずしもそうではありません。
もっと高性能な車もあるのにそれを買えない、または交通機関の発達でそもそも車の便利さへの感動が減っているなど、車を所有する「満足感」はむしろ下がっている場合もありえます。

選択肢やチャンスが増えたから人は満足するわけではありません。むしろ、それは「何を選ぶべきなのか」「もっと他に選択肢があったのではないか」「自分はチャンスを活かしきれたのか」などと感じなくてもよかった不満のもととなり、私たちの内発的な不安を生む可能性を高めます。
インターネットが普及し、情報を誰もが簡単に手に入れられる時代、SNSではお互いに自分のリア充な日常を見せびらかし、他人はこんなに充実しているのに比べて、自分はどうなのだろうか? と、「相対的剥奪」の感情に振り回される人も多くなっていないでしょうか。

こんな時代には自分の不満感情のほとんどが「相対的剥奪」から生じていること、つまり所詮は「相対的」であることを認識し、その期待値と現実とのギャップを柔軟に受け入れ、現実に向き合って期待値を見直し、新たな期待値に向かって行動しながらギャップを埋めていく。
こういった考え方、行動が人生を前向きに生きていくコツなのではないかと思います。

台風15号で停電が続く中、Aさんは同じマンションの方々を自宅に呼んで、冷蔵庫の海産物を調理してみんなに振る舞い「停電もたまにはいいもんだな」と毎晩酒盛りを楽しんでいたとのことです。
さすがにエレベーターが動かないのはきつかったですが、停電で夜空の星が最高に綺麗だったことなど、Aさんは本当にどんな状況でも「相対的剥奪」に振り回されずに人生を楽しめるんだなあと感心しました。私自身も「現実+自分のできること」を期待値として、どんな状況であっても人生を楽しんでいられる人間でありたいと思います。

台風15号、19号で被災された方々に対して、決して「考え方次第で人生楽しめるんだよ」と言いたいわけではありません。
今回の被災者の方々の状況は「絶対的剥奪」と言っても過言ではありません。
被災者の方々には一刻も早く、実現可能な期待・復興の道が示され、再び前向きに人生を歩き始められる日が来ることを願って止みません。

佐々木 務j.union株式会社 管理本部

週末の家族サービス、子ども相手にいろいろ遊んでいるうちに
自分の方がハマっている事が多々あります。
もはや「サービス」ではなく「趣味」かも知れません。

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