2019.11.03
【組織運営】集団的浅慮に陥らないための組織

認知バイアスとは

働く人を対象にした調査を生業としていることもあり、社会心理学関連の書籍を読んだりWebサイトにアクセスしたりすることがあります。そのたびに痛感するのが、私たちが認識する世界は認知バイアスだらけだということです。認知バイアスとは、ある対象(モノや現象)を評価するに当たって、自分の都合の良い方向に考えをゆがめることや、対象の目立ちやすい特徴に引きずられることで別の特徴に対する評価がゆがめられる現象を指します。卑近な例で言うと、晴れ男(女)や雨男(女)といった天候に対する認知バイアスです。この手の人たちの話を見聞きしていると、晴れた時のことしか言及しない、雨が降っても途中で晴れてきたら晴れだと見なすといった、明らかな認知バイアスが認められます。占いにおいても認知バイアスがあります。誰にでも当てはまるような言説で対象を納得させる(例:あなたは外向的なときもありますが、その一方で内向的で用心深いときもあります)、バーナム効果というものが有名です。これらは個人に対する認知バイアスですが、集団にも認知バイアスが起きることがあります。

集団的浅慮とは

一人で考えるよりは複数で考えた方がより良い考えが出るという意味の「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあります。その一方で、集団的浅慮(group think)に陥ることもあります。集団的意思決定の場において、個人的意思決定よりも劣る決定がなされる傾向のことです。前者はメンバー間で良い相互作用が生じること、後者は相互作用が生じない場合を指します。
会社や組合の会議の決定事項に対して、「何でこんな結論になったんだ?」といった経験をしたことはありませんか? 集団で考えているのに、つまらない結論になっているということですが、まさしく集団的浅慮によるものです。その結論が大きな損害を生んだりしなければいいのですが、なかには人命を失ったという例があります。
1986年1月、スペースシャトル「チャレンジャー号」は打ち上げ直後に爆発を起こし、その結果7名の乗組員が死亡するという事故が起きました。技術的な原因はここでは省略しますが、この件は集団的浅慮による人災ではないかという指摘がなされています。NASAは爆発につながるリスクを指摘されていたにもかかわらず、それを受け入れず計画通りに打ち上げることを優先したというのです。以降、この事故は集団的浅慮の典型的な事例として取り上げられることになったわけですが、集団的浅慮はどのような場合に発生し、どうすれば防げるのでしょうか。

集団的浅慮への対応

アメリカの心理学者のアーヴィング・ジャニスによると、集団的浅慮を起こす条件とは次の3点です。みなさんの組合や会社はこのような条件に当てはまっていないでしょうか。

1. 集団凝集性の強い集団(=団結力のある集団)
2. 構造的な欠陥の所持(意見の多様性の欠如、不公平な意思決定など)
3. 刺激の多い状況(外部による強い脅威など)

こういうことによって意思決定のプロセスが機能せず、稚拙な意思決定を招いてしまうということです。集団凝集性が強い状態は、一見良好そうに思えます。ですが、斉一性の原理と言う、ある特定の集団が集団の内部において異論や反論などの存在を許容せず、ある特定の方向に進む現象が起きやすいのです。このような条件に当てはまらなくとも、時間が限られ、十分な議論を尽くせないまま決議を取らなければならないことは往々にしてあることでしょう。そんな状況で多様な意見を組み入れることは困難と言えます。
これらへの対策として「悪魔の擁護者」という役割を設定することが有用だと言われています。あえて反対の立場からの意見を述べさせ、そこから多様な意見を言いやすいようにするというものです。また、その状態になると心理的安全性が担保されます。
心理的安全性は生産性に寄与すると言われています。シニカルでひねくれた人に任せるのではなく、持ち回りの役割として「悪魔の擁護者」を設定することが重要です。それによって参加者も多角的に物事を見るようになり、意思決定も円滑に進むことが考えられます。

依藤 聡j.union株式会社 調査グループ

好きな言葉は「繰上返済」です。

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