2020.01.05
【働き方改革】未来を憂う前に

2020年になりましたね。昨年も本当にお世話になりました。
ありがとうございました。

今年は、労働組合や働く者にとってどんな一年になるのだろうか。
人工知能(AI)、IoT、ロボットなどの科学技術が加速度的に進化し始めている。我々の物質的な暮らしは更に豊かなものになるだろう。世界最速で超高齢社会に突入した日本の暮らしを物心両面から豊かにするためにもっと科学技術を有効活用しなければならないという言い方が適切かもしれない。
2005年、アメリカのAI研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル博士が、「2045年までにはAIが人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達する」と提唱した。それからのテクノロジーの進化はその予想をはるかに上回るスピードで進んでいる。
「暮らしの未来」には光明が差している一方、「働くことの未来」はどうだろうか。
2014年、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士が「米国労働省が定めた702の職業を分析した結果、米国の雇用者の47%が10年後に職を失う」という研究論文「雇用の未来」を発表した。翌15年、株式会社野村総合研究所(NRI)とオズボーン准教授及びフレイ博士との共同研究により、「日本の労働人口の49%が就いている職業において、機械に代替可能」という研究結果も報告された。
日本の多くの働く者の脳裏にも、「自分の仕事が機械に代替される」という不都合な未来図がよぎり始めた。ヒトと機械の相克の原点は産業革命時代のイギリスである。当時、工場内に機械が普及して、失業のおそれを感じた手工業者や労働者が機械破壊運動(ラッダイト運動)を起こした。現代においてもAIやロボットの進化と台頭に抗うかのようなネオ・ラッダイト運動の萌芽はある。ヒトと機械は、出会った時から相思相愛という訳にはいかない関係なのである。
オーストリアの文明批評家イヴァン・イリイチは、「人々は自分のかわりに働いてくれる道具ではなく、自分とともに働いてくれる新しい道具を必要としている」という箴言を半世紀も前に残しているが、我々はいまだに「ヒトが機械の奴隷になるのか、機械はヒトの道具に過ぎないか」の二分法的思考から卒業できないでいる。機微な感情をもったヒューマノイド(人間を模した人工生命体)とヒトが、役割分担しながら共に暮らし・働くというリアルとバーチャルが混在した拡張世界は、そんなに悪い未来ではないはずなのだが。

昨年、弊社のオープンイノベーションワークショップLink-U(Linking Union)」でお世話になっている「Society5・0」や「未来洞察(フォーサイト)」研究者、七丈直弘教授(東京工科大学)にお話を伺った際には、「自分の仕事が機械に代替されるという未来の雇用研究にも続編があり、2016年にはヨーロッパ経済研究センターから『職業を構成するタスク(業務)単位でみた場合に大半のタスクが自動化される職業は9%(日本では7%)程度にとどまる』との研究報告もある」ということであった。
例えば、会計の業務(タスク)で遡及してみると、手書き→そろばん→電卓活用→PC(表計算)入力→バーコード処理などの変遷はあったが、会計という仕事自体はなくなっていない(まあ、このタスクの学び直しも大変ではあるが)。
「日本人は、過剰不安に陥っているんです。そんなに心配しなくても大丈夫なんですよ」という心強いアドバイスもいただけた。
前述のオズボーン教授とNRIとの共同研究でも、AIやロボットによる自動化が難しい職業には、①抽象的な概念を整理・創出するような「創造的思考」②理解・説得・交渉といった高度なコミュニケーションや他者へのサービス志向性のある対応力、自分と異なる他者とコラボレーションできる「ソーシャルインテリジェンス(社会的知性)」③役割が体系化されておらず、あらかじめ用意されたマニュアルなどではなく、自分自身で何が適切であるか判断できる「非定型への対応」という3つの特徴があるとのことだった。
言い換えるとヒューマン・ウェアの求められる仕事であり、組合活動そのものがその人材育成の場になりうると直感的にひらめいた筆者は、少し楽観主義なのだろうか。

「未来がどうなるのか?自分の仕事がなくなるのでは?」と憂う前に、「我々の未来をどうしたいのか?」と自問する方が、「働くことの未来」や「精神的に豊かな暮らし」にとっても大きく寄与しそうである。
「未来」は「未だ来ていない」
「どうありたい(being)のか?」と問い続けるヒトを「人間(human being)」というのだから。

2020年も、労働組合の応援団として「職場を明るく、仕事を楽しく、人を元気に」していきます。どうぞよろしくお願いします。

今回の記事の七丈直弘教授のお話について、
「ぜひもっと知りたい」という方がいらっしゃいましたら、
下記のリンクにてご紹介させていただいております。


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服部 恵祐j.union株式会社 取締役副社長

「ご機嫌な職場づくり運動」に夢中です!

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