2020.08.31
組合員の「キャリア形成」、労働組合はどう関わる?

労働組合が「キャリア形成」を活動に取り入れても良いの?

組合役員様とお話している中で、組合員の「キャリア形成」は会社側(主に人事部)が進めることなので、労働組合が取り組んで良いのか疑問に感じるというお話を伺います。おっしゃるように制度・仕組みを整え、相談室の設置や研修会などの人材育成に取り組まれている企業も増えてきています。現状はどうなのでしょうか。
コロナ以前になりますが、厚生労働省が実施している国内企業・事業所を対象にした「能力開発基本調査」(令和元年度)によると、労働者のキャリア形成支援の設問から「キャリアコンサルティングを行うしくみを導入している事業所のうち、キャリアコンサルティングを行う上で問題点がある事業所」は正社員67.3%、正社員以外では59.2%でした。問題点を詳しく見ていくと、「労働者からのキャリアに関する相談件数が少ない」(正社員41.4%、正社員以外41.7%)、「労働者がキャリアに関する相談をする時間を確保することが難しい」(正社員40.2%、正社員以外38.3%)、「キャリアに関する相談を行っても、効果が見えにくい」(正社員39.0%、正社員以外39.1%)という結果が出ています。
 一概には言えませんが、より良い制度や仕組みが整っていても活用する社員(組合員)側にも課題があり「周知されていない」「知っていても時間が取れない」「関係性のない相手に相談しづらい」など、さまざまな理由が想定されます。効果を感じられていない側面からは、キャリア=経歴・就職や転職・昇給昇格などのイメージで留まっている可能性も考えられます。

キャリアとは人生そのもの

「キャリア発達理論」を提唱した、ドナルド・E・スーパーは、キャリアの定義を「人々が生涯にわたって追求し、社会的に占めている地位・業務・職務の系列」としています。仕事だけに限定せず、キャリアは人生のそれぞれの時期で果たす役割(ライフ・ロール)の組み合せであると考え、その人を取り巻く人間関係、社会的な役割、生き方そのものを指しています。ライフ・ロールの時期や期間は人によって異なりますし、職場や家庭や地域などのさまざまな環境下で、「学生の自分」「働く自分」「余暇を楽しむ自分」「(親から見た)こどもの自分」「市民の自分」「家庭人の自分」など複数の役割を選んで組み合わせ、同時に担い、私たちはキャリア(人生)を形成していきます。役割は自分一人だけで完結するのではなく他者との関係も影響しており、環境や経験の影響を受けながら一生をかけてキャリアを形成していきます。

労働組合の強みを発揮したキャリア形成支援

労働組合は、多様な組合員と向き合い、組合員の幸せを創造・実現するための組合活動を進めてきていますので、実はキャリア形成支援も得意なのではないかと感じます。
今回お伝えしたスーパーの提唱するライフ・ロールの考え方に、労働組合がすでに取り組んでいる活動を当てはめてみると、

・人材育成、生涯学習=学生の自分
・職場改善活動、スキルアップ研修=働く自分
・レク活動、福利厚生支援、=余暇を楽しむ自分
・介護対策=(親から見た)こどもの自分
・社会貢献活動=市民の自分
・共済の活用=家庭人の自分

上記にあげたものは一例ではありますが、数多くの組合活動が、キャリア形成への後押しになるでしょう。また、組合員本人が今置かれている役割や今後選択する役割への理解を深め、困っていることへの解決のキッカケにもつながります。

自身のキャリアを「考えたことがない」「漠然と不安に感じる」という組合員に対して、分け隔てなく対話活動や学びの機会を設けていきやすいのも労働組合の強みです。個別で対応されている相談活動もその一助につながります。他者に話すことで考えが整理されたり、気づきを得るキッカケにもなったります。中には組合活動を通じて、新たな人生の役割を見出して行動される方もいるかもしれません。
 
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、組合員のキャリアに対する価値観も大きく変わっていく可能性があります。これからどのように働き、生きていくのか、益々主体的なキャリア形成が求められているように感じています。
労働組合の強みを発揮していくことが組合員のキャリア形成支援の後押しにつながりますので、ぜひ紐づけて活動をしていきませんか。

横山 千裕j.union株式会社 東京支店

かけだしのキャリアコンサルタント。10年以上前に掲げたプロフェッショナル宣言が「お客様と働きがい・生きがいを共に考える」だったことに最近気づき、無意識に行動の軸になっていたことに驚きました!

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