j.union株式会社

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2020.10.18
執行委員経験は本人・組合・会社の三方良しになる!?

筑波大学との共同研究

弊社が業務提携している筑波大学 働く人への心理支援開発研究センターとの共同研究で、「非専従執行委員における本務と組合活動の両立を通した職業的発達プロセス」という論文(以降、当論文)を企画・作成いたしました。今回はその論文の概要を述べたいと思います。当論文の研究要領は次の通りです。

<目的>
労働組合の役員経験と本務との両立が職業キャリアの発達に寄与しているかをインタビュー調査によって明確にする

<インタビュー時期とインタビュー対象者>
2019年6~9月 現役の非専従執行委員 16名

<インタビュー内容>
1)非専従執行委員(以降、執行委員)はどのような経緯で受任し,その後執行委員としての役割遂行と意識や行動はどのように変化するのか。
2)執行委員としての役割遂行と意識や行動の変化にはどのような要因が関連するのか。
1) 2)に基づいた15項目を聴取しました。

結果図の説明

当論文の説明を文章だけで伝えきれないため、こちらの結果図に基づいて論を進めます。結果図とは、インタビューで得られた言語データから見い出した概念間の関係を図示化したものです。
結果図は[1.意思決定前の逡巡]~[14.仕事面]の14カテゴリー、それらを包括する【Ⅰ:役員になるまで】~【Ⅴ:基盤となるもの】の5カテゴリーグループから構成されます。カテゴリーグループの関連ですが、まず【Ⅰ:役員になるまで】の経緯があり,【Ⅱ:役員としての役割遂行と意識や行動の変化】と【Ⅲ:役員経験により得られたもの】が並行して進んでいくプロセスです。【Ⅱ】に対しては【Ⅳ:苦労とやりがい】が都度影響を与え、【Ⅱ】の基盤には【Ⅴ:基盤となるもの】が存在しています。それらの詳細の関係が14カテゴリー間の関係となります。

※リンク先情報、引用元
「非専従執行役員における本務と組合活動の両立を通した職業的発達プロセス」
著者原 恵子(筑波大学働く人への心理支援開発研究センター)/堀内 泰利(筑波大学働く人への心理支援開発研究センター)/岡田 昌毅(筑波大学人間系)/依藤 聡(j.union 研究所)/清水 康子(j.union 株式会社)/正道寺 博之(j.union 株式会社)

執行委員の経験と職業的発達

本稿をお読みいただいている方のほとんどは労働組合の役員だと思われますが、この結果図を見てどうお感じになったでしょうか? 多くの方は当たり前のことが記載されているとお感じになっているのではないかと思います。ですが、このように学術的なアプローチとして論文化した事例はこれまでにありません。ですので、弊社としては大変意義のある論文だととらえています。

当論文で言いたいことは次の通りです。
執行委員を続けることは、①本務へのパフォーマンス向上 ②自身のモチベーション管理能力の向上 ③キャリアプランにおける選択肢の拡張 ④社会人としての総合的・汎用的な意識や能力の拡大などにつながります。また、組織への貢献と個人としての成長の両面が見出されたことは,執行委員にとっての職業的発達として重要な示唆です。①~④のようなキャリア自律意識(自ら主体的かつ自律的にキャリアを形成しようとする意識)や総合的・汎用的能力が常態化することによって、本務へのパフォーマンス向上につながり、組織(職場や会社)への貢献につながります。執行委員の経験で得られるメリットによって、執行委員を引き受ける確率が高まることが予想されます。つまり、執行委員経験が本人・組合・会社の三方良しの端緒となり得ると言えます。

組合活動の円滑化のためには上司対策を

一方で、論文では、上司が執行委員の組合活動に対する促進要因にも阻害要因にもなるとの言及がありました。そのことから、上司に組合活動を理解してもらえるかは重要な側面であると考察しています。執行委員一人一人の対策だけでなく、組合としても上司対策は組合活動を円滑に進めるためには取り組むべき課題であると言えます。

※留意点
当論文の留意点です。執行委員を経験すれば必ず①~④のことを獲得できるわけではありません。今回のインタビュー対象者から得られたデータに基づいて分析すると、先ほど説明したプロセスでキャリア自律意識や総合的・汎用的能力が高まるとお考え下さい。換言すると、執行委員経験がキャリア自律意識や総合的・汎用的能力を向上させない場合もありうるが、提示したプロセスを経ることで向上させることができるということです。
ただし、論文は飽くまでも論文なので、この内容を組合活動にどのように展開していくことを検討する必要があります。本稿をお読みになってご興味の湧いた方がいらっしゃれば、どのように展開するかを、是非一緒に考えましょう。

依藤 聡j.union株式会社 調査グループ

好きな言葉は「繰上返済」です。

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