j.union株式会社

労働組合の活動を
総合的に支援します。

2022.04.03
自己認識力とキャリア支援


◆Link surveyの調査結果から見えた課題

j.union Labで実施している共同調査「Link survey」の調査においてどの組織でもほぼ同じ傾向の結果になり、参加組織の役員の方々が参加するワークショップ「Link salon」でもたびたび取り上げられるのが、「個人のキャリア形成に関する意識」を問う設問の結果です。これを見ると、自身の描くキャリアに近づいているかどうか肯定も否定もできない割合が最も高く、「キャリア」の概念や定義がそもそも分からない(知らない)、もしくは「自分が目指すキャリアイメージがついていない(見えていない)」という状態であることが明らかです。

いま私たちは大きな変革期を迎えており、一人一人が自分の生き方や働き方を考え主体的にキャリアを形成していく「キャリア自律」が求められています。しかし現状では、「そもそも目指すキャリアが分からない」という方が半分を占めているのです。

先日行われたワークショップでは、個人のキャリア形成意識に影響している要素について「相関行列表※」を基に見ていきました。すると、「自身の描いたキャリアに近づいている」と感じるには「やりたいことが明確である」ことのほか「能力や技術の伸長」や「能力の職場承認」と関係性があり、それがひいては「仕事への関心」や「仕事の楽しさ」にもつながることが明らかになりました。
※相関行列表...設問間の相関関係が分かる表

◆Link surveyから見えたキャリア支援とは

ここからどのようなキャリア形成支援ができるのか考えてみたいと思います。そもそもキャリアを描くには自分が何をやりたいのか、何を目標としていくのかを明確にイメージすることが大切ですが、それと共に自分の能力を自分や他者がどのように捉えているのか把握できる「自己認識力」が高いとキャリアを考える際の見通しがつきやすくなります。
自己認識力(セルフ・アウェアネス)とは、自分自身のことを正確に理解する力(自分とは何者であり、他者からどう見られ、いかに世界へ適合しているかを理解する能力:ターシャ・ユーリック『インサイト』より)のことです。自己認識力には「内面的なもの」と「外面的なもの」の2つがあります。前者は、自分自身を明確に理解する力を指し、後者は、外の視点から自分を理解すること、つまり周りが自分をどう見ているかを知る力のことを指します(前出『インサイト』より)。

この内向きと外向きの視点は両者のバランスが取れていないと自己認識力は低くなるため、意識して両方の視点を持つことが重要です。

例えば、自分ではある特定のスキルを持っていると自負していても外からはそのスキルが不足していると評価されていることもありますし、その逆もあります。自己認識のバランスが悪いと自分の強みや弱みも把握することができません。それだけではなく、自分にとって何がやりたいことなのか、何が課題なのかも分からないため、キャリアの迷子になってしまいます。ユーリックによると、自己認識をする能力はほぼすべての人間に備わっていますが、生まれつき持ち合わせているものではなく、社会や他者との関わりの中で培われていくものなのです。



◆労働組合に期待する組合員の自己認識への支援

この「ブラインド・スポット(自己認知を妨げる目に見えない心の障壁)」を取り除き自己認識力を高めるには内省のほか、「信頼できる複数人の他者の視点をいかに取り入れるか」がポイントです。個人が周囲との関係性を広げ多様な視点を持つには、労働組合が日ごろの対話を中心とした職場活動を通じて組合員との信頼関係を築き支援することが可能です。
ただしここで注意しなければならないのは、フィードバックという名の「ダメ出し」や「指示」をすることです。人は対話を通じて思考を整理し、内省化していきます。

さらに自ら気づくことで行動変容が起こります。他人からのアドバイスは有効な時もありますが、価値観も多様化している中で必ずしも相談者の状況に適切なものとは言えず、また相手との依存関係を生み出し、自律的なキャリア形成からは遠ざかってしまいます。

客観的で専門的な支援が必要な際はキャリア・コンサルタントに相談することもできますが、その前に職場活動の中で、悩み、迷っている組合員に対して真摯に寄り添い、心の声にも耳を傾け「傾聴」することが組合役員にできる効果的かつ有効なキャリア支援なのです。ぜひ自信をもって活動してください。

清水 康子j.union株式会社 経営企画本部

週末はサッカー三昧

« 前回の記事 次回の記事 »