j.union株式会社

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2022.05.15
労働協約の締結にも落とし穴?

今年も育児・介護休業法、高齢者雇用安定法などの法改正が行われました。
法改正が行われるたびに労使で話をする機会が増え、そして労働協約の改定が行われるのではないでしょうか。

また、働き方の多様化を進める上で、人事制度や賃金制度の見直しも多くなり労働協約も合わせて見直されるケースが増えているかと思います。
ちなみに、「令和2年 労使間の交渉等に関する実態調査 結果の概況(厚生労働省㏋参照)」によると、労働協約の締結状況をみると、労働協約を「締結している」93.1%、「締結していない」6.8%となっています。

また、確認のために記載しますが、労働協約とは労働組合が使用者と対等な立場に立って、団体交渉を行い、その結果、決まった賃金、労働時間等の労働条件を書面に作成し、両当事者が署名又は記名押印したものをいいます。

これは、言うまでもなく、労働組合としての特権となっています。
この労働協約の締結は就業規則よりも効力の優先順位が上にあり、労働組合との合意は法律的にも重みがあります。

しかし、労働組合といえども、自社の経営状況が厳しくなると、苦渋の決断として雇用維持を前提に賃金などの労働条件を引き下げる不利益変更に合意して、会社と長期的な相互譲歩の取引を行っているのも現実です。
労働組合は会社と労働協約の締結によって、労働条件を不利益に変更しようとすると問題が起きますので注意しておきましょう。

前提として、労働条件の不利益変更は原則禁止されています。しかし、労働者との「合意」(労働契約法第9条)がある場合と、変更した就業規則を「周知」させ、かつ、「合理性」がある(労働契約法第10条)場合は不利益変更が可能になります。また、「合理性」の中には「労働組合等との交渉」も条件の一つになっていることから労働組合は重要な役割を担っています。

<参考>
◆労働契約法
第9条
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

第10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。


そこで、以下の3点の場合は労働組合と会社の合意があっても覆される可能性があるので押さえておきましょう。

①組合員の権利性が強いものを処分する決定する場合
 例)既に発生した個人の退職金債権の額を引き下げることや、特定の労働者の労働契約の成立ないし終了させること

②特定の組合員をことさら不利益に取り扱う場合
 例)特定の組合員だけに労働条件を低下させることを目的とした協定を締結すること

③大会等で承認を得ない民主的手続きを踏まない場合
例)組合規約に労働協約の締結は大会附議事項とされているにもかかわらず、手続きを踏まず締結する など

特に③は急いで労働条件を会社と合意する必要があるなどの理由から、民主的な手続きを行わず、進めてしまうと合意内容が無効となり、遡って対応をしていくことが必要になります。特に労使間で争い、裁判まで持ち込まれた場合は、判決がでるまでに時間が掛かります。そして、労使で合意した内容が無効の判決が下された場合、例えば賃金や手当であれば遡って支給するなど、大きな労力をさくことになる可能性もあります。

定期的に労働協約の見直しをして労使で議論し労働条件を引き上げていくことや、労使が目指す働き方に合わせてワークルールを変更することは、これからも活発に行っていくことは必用不可欠です。ただ、改変する時の内容と手続き次第では大きな問題になることもありますので、議論は大胆に、手続きは慎重に行いましょう。

池上 元規j.union株式会社 カスタマーサクセス本部

休みの日は家で料理をするのが趣味です。体重を気にせず、美味しく食事が出来るようにランニングを始めました!

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