journal_vol.303
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「平成版」の限界「令和版」の着地点「平成版」の反省しかし、この素朴な信憑に変化が起きているのではないか、という点を問題提起したいと思います。ジョブ型雇用についての議論の活発化や、成果主義型配分の強化などを見ると、経営側としては「収益に貢献する人材のみを手厚く優遇したい」「組織の一体感を残しつつ、社内での競争心を煽りたい」という本音を隠さなくなってきているように思います。返す刀で一部の従業員側も勤め先に対する帰属意識を過度に持つことなく、「今の仕事は自身のキャリアの一ステップに過ぎない」「会社とは利用するもの」「旨味がなくなればよそを探す」というようなドライな職業感を強めています。働く人の立場を補足すると、将来はますます不確実なものになっていくのにもかかわらず、寿命が延びることだけは確定しているという極めてストレスフルな現実があるわけです。勤め先に自身の運命を全て預けて、脇目も振らず与えられた仕事に黙々とまい進する、という一昔前に推奨されていたような働き方を選択することは非常にリスキーであり、その点を突いて「コミットメントが弱い」と糾弾するというのはあまりに酷な話です。そのような現実を見据えて、労働組合はどのような活動を展開すればよいのか、ということに対する私見を述べます。労働組合は組合員の雇用の不安定化を避けるために、「雇われる力」を向上させる、という取り組みに積極的に資源を投下する必要があると考えています。いざとなれば他社でも不自由なく働くことができる、という状態になれば、企業としては優秀な人材の流失を防止するために働く環境や待遇を向上させるインセンティブが高まり、組合員の要望により誠実に耳を傾けるようになります。そうして「どこでも働けるけれど、あえてここで働いている」という自律した社員が増加することで、労使が良い緊張感を保てるのではないかというのが私の見立てです。まずこれまで提言してきた「平成版」を振り返ると、反省点が3つあります。①組織率低下に歯止めをかけられなかった。特に非正規労働者の組織化の意義や価値を提示できなかった。②個別春闘として被考課者訓練を提起してきたが、春闘に変わるムーブメントを起こせなかった。Ⓒj.unionInc. All rights reserved.Ⓒj.unionInc. All rights reserved.5経営者組合員「収益に貢献する⼈材に限って」豊かさを保証したい「⾃分の利益になる限りにおいて」企業に貢献するj.nin journa同床異夢の労使関係j.union「労働組合の意義と機能」概略対⽴•頭と⼿⾜•指⽰通りにこなす→対価を要求協調•⼆頭体制•組合も企業の⻑期的発展に貢献

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